◎開票率99%時点で▽賛成38.1%▽反対61.9%となり、ボリッチ政権が起草した新憲法は否決された。
2022年9月4日/チリ、首都サンティアゴ、憲法改正に反対する人々(Matias Basualdo/AP通信)

南米チリで4日、憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、開票の結果、反対多数で否決された。

新憲法が新しい進歩的な時代を切り開くと主張していたボリッチ(Gabriel Boric)大統領は有権者に謝罪し、「草案を見直す」と約束した。

報道によると、開票率99%時点で▽賛成38.1%▽反対61.9%となり、ボリッチ政権が起草した新憲法は否決された。

政府報道官は記者団に対し、「結果を真摯に受け止める」と述べた。また報道官は、「この結果は国民が新憲法に満足していないことを示している」と述べ、草案の見直しに意欲を示した。

有権者の多くは1973年から1990年まで政権を握った故ピノチェト(Augusto Pinochet)元大統領時代に起草された憲法の改正に賛成している。

しかし、左派のボリッチ政権が数カ月で起草した新憲法には反対だったようだ。

ある反対派グループはSNSに投稿した声明で、「ボリッチ大統領は全国民が納得できる草案を作るべきだった」と述べた。

草案の最初の条文には「チリは社会的・民主的国家であり」と書かれている。草案が採用されれば、憲法は11の先住民族グループを公式に認めることになる。このグループは人口の約13%(1900万人)を占めている。

また草案は、先住民向けの新しい公的医療制度や先祖代々受け継いできた土地の返還を要求している。さらに、住宅で生活する権利や男女同一労働賃金など、新しい権利も複数打ち出されている。

さらに「男女の代議員数を均等にする」という世界初の試みも組み込まれた。

多くの地元メディアが否決を予想していたが、これまど大差がつくと予想したメディアと専門家はいなかった。

草案は「男女の代議員を均等にする」としたが、反対派は左派政権が人気取りのためにやっているなどと批判した。また、環境と男女平等を意識した条文があまりに多く、無駄に長く、明確さに欠けるといった批判の声も相次いだ。

首都サンティアゴで投票した男性はAP通信の取材に対し、「草案は一方に傾きすぎていて、チリ人全員のビジョンを反映していない」と語った。「憲法改正には賛成しますが、左寄りでも右寄りでもない憲法でなければなりません」

この草案が承認されることを切に願う人たちもいた。

サンティアゴの国立競技場前投票所で投票した女性は、「独裁大統領の金持ちを優遇する憲法を破り捨てよう」と道行く人に訴えた。

世論調査によると、ボリッチ氏の支持率は急落しており、一部の専門家は今回の国民投票を政府の信任投票とみなしていた。

憲法草案がどうなるかは不明である。野党も憲法改正には賛成しているため、今後何かしらの話し合いが行われるかもしれない。

しかし、どのようなプロセスで憲法を起草するかは決まっておらず、問題解決にはかなりの時間がかかると思われる。

ボリッチ氏は4日の声明で全政党の党首に対し、「今後の道筋を決める会議を開く」と呼びかけた。

今回の国民投票で2019年の学生主導の抗議行動とその後の爆発的なデモから始まった3年にわたるプロセスはクライマックスを迎えた。このデモは公共交通機関の料金値上げに端を発したものだったが、平等と社会的保護を求める全国デモに拡大した。

この時、有権者の8割弱が憲法改正に賛成していた。そして2021年、政府は憲法制定委員会の代表を選出したのである。

2022年9月4日/チリ、南部プンタアレナス、ボリッチ大統領(Andres Poblete/AP通信)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク