◎ロシア高官はこの考えを公然と支持している。
北朝鮮はロシアの侵略戦争で荒廃したウクライナ東部ドンバスやその他のロシア軍占領地に自国の建設労働者を派遣すると示唆している。
ロシア高官はこの考えを公然と支持している。
ロシア国営メディアによると、駐ロシア北朝鮮大使は最近のインタビューで、北朝鮮の勤勉な労働者を絶賛したという。
またこの大使は最近、ウクライナ東部ドネツク州とルハンシク州で独立を宣言した人民共和国高官と会談し、労働分野での協力などについて協議したとみられる。
北朝鮮は先月、ロシアとシリアに続いて、ドネツク・ルガンスク両人民共和国の独立を承認し、ウクライナと断交した。
ロシア占領地への労働者派遣は国連安保理が科した制裁に抵触し、北の核軍縮に向けた取り組みを複雑にする可能性が高い。
西側の専門家は世界で最も貧しい北朝鮮が西側の兵器が流れ込み、激戦が続いているウクライナ東部に労働者を派遣するとは到底思えないと予想している。
ただし、戦闘が落ち着けば、労働力の供給はあり得るかもしれない。
ロシアのフスヌリン(Marat Khusnullin)副首相は国営メディアのインタビューで、「北朝鮮の建設会社がドンバスの再建を支援すると申し出ており、それが実現すれば、ロシアは大いに歓迎するだろう」と述べている。
国連安保理は2017年末、加盟国に対し、24カ月以内に全ての北朝鮮労働者を国外退去させるという厳しい経済制裁を発動した。
国外で働く北朝鮮の労働者は、金正恩(Kim Jong-un)党総書記率いる朝鮮労働党の主要かつ合法的な外貨獲得源だった。労働者たちは年間数十億ドルを稼ぎ、自国に送金していた。
米国務省は以前、制裁発動後も約10万人の北朝鮮労働者がロシア、中国、アフリカ、中東、欧州の一部、南アジアなどで働いていると推定していた。
この問題に詳しい韓国の専門家によると、北の労働者は現在、朝鮮労働党のために年間2億~5億ドルを稼ぐ一方、給料はほんの一部しか受け取らず、1日12時間以上も働いているという。
ロシアは2019年12月の制裁期限前に北の労働者を帰国させたと主張したが、数百から数千の労働者がロシアに残り、今もどこかで黙々と働いていると考えられている。
韓国の北朝鮮専門家であるドンワン(Kang Dong Wan)氏はAP通信の取材に対し、「北朝鮮がロシアに残した労働者を利用すると決めれば、おそらく数百から数千人をドンバスに容易に派遣できる」と述べた。
ドンバスの復興事業が北朝鮮経済にプラスに働くかどうかは不明である。
ロシアは西側の経済制裁で外貨を失い、資金不足に陥っている。一方、北朝鮮はルーブルでの支払いに関心がないと思われる。
北朝鮮はルーブルではなく食料、燃料、機械などの物資をロシアに要求するかもしれない。この労働力と物資の交換も安保理の制裁に違反する可能性がある。
韓国統一研究院のシニアアナリストは、「北は労働力の供給による利益ではなく、もっと大きなものを狙っている可能性がある」と指摘している。「北は中露との関係を強化することで、対米統一戦線を構築できると考えているかもしれません...」
北朝鮮はウクライナ侵攻の混乱を利用して兵器開発を加速しており、米・中露の対立もうまく利用している。
中露は今年、北のICBM実験に対する国連の制裁強化決議案に拒否権を発動した。
北とロシアは重要な政策についても意見が一致している。
北はウクライナ侵攻について繰り返し米国を非難し、ロシアは西側の覇権主義的な政策から自国を守るために行動したと主張。軍事行動を正当化した。
一方、ロシアは米韓両国が今年本格再開した合同軍事演習を繰り返し非難し、これらの国々が北朝鮮を刺激し、この地域の緊張を悪化させていると非難した。
ロシア政府は韓国が国境付近から北にコロナウイルスをバラまいたという怪しげな主張を支持している。
米国主導の経済制裁で苦境に立たされている北は、今後数カ月以内に少人数の労働者を「偵察部隊」としてウクライナ東部に派遣し、戦争の行方次第でその数を徐々に増やす。と予想している専門家もいる。