◎北の医療システムは整っておらず、コロナの蔓延は大量死につながる恐れがある。
北朝鮮の国営メディアは12日、国内で初めてコロナウイルスを検出したと発表した。
朝鮮中央通信によると、首都平壌で感染力の強いオミクロン株BA.2が検出されたという。感染者数は明らかにしていない。
朝鮮中央通信は、「2020年2月から2年3カ月にわたって安全に保たれてきた緊急検疫戦線に穴が開き、最大の緊急事態が発生した」と報じた。
北朝鮮は2020年1月に国境を封鎖し、世界がコロナに悩まされる中、ひとりも感染者を出さなかったとされる。
しかし、多くの専門家が、「北と中国の広大な国境と貿易を考慮すると、感染者ゼロは極めて疑わしい」と指摘している。
北朝鮮は世界保健機関(WHO)などが主導する発展途上国向けのコロナワクチン展開プログラムCOVAXの申し出を繰り返し拒否している。
COVAXは「北がコロナの感染拡大に対処するのは困難」と警告している。
コロナに打ち勝ったと自負している金正恩(Kim Jong Un)党総書記は核・ミサイル開発に注力すると誓っており、西側医療部門の懸念に耳を傾ける可能性は低い。
韓国の専門家によると、北の食糧危機は極めて深刻で、貧しい農村部は飢餓状態に陥っているとみられるという。これらの地域は医療システムも整っておらず、コロナの蔓延は大量死につながる恐れがある。
国連はコロナが出現する前のデータで、「北朝鮮国民の4分の1以上が栄養失調に苦しんでいる」と推定していた。
また国連食糧農業機関(FAO)は昨年7月、「北朝鮮が2021年に必要とする食糧は国境封鎖などの影響で86万トン不足する可能性がある」と警告した。
1994年から1998年頃に発生した大飢饉では、市民200万~350万人が餓死または栄養不足に関連する病で死亡したと推定されている。