◎メキシコ政府は麻薬カルテルとの戦いを続けているが、戦争が終結する見通しは全く立っていない。
2月28日、メキシコ警察は麻薬カルテルの支配下に置かれている中西部ミチョアカン州で17人が処刑された可能性があると明らかにした。
アルジャジーラなどによると、警察はカルテルの構成員と思われる男たちが同州の葬儀会場を襲撃し、弔問客を引きずり出し、射殺する映像を確認したという。
この映像はソーシャルメディアなどで広く共有されている。
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は28日の記者会見で州警察が捜査を始めたと明らかにしたうえで、「映像が真実でないことを願っている」と述べた。
政府の報道官によると、州警察は事件現場で薬莢を回収したが、遺体は見つからなかったという。
ソーシャルメディアで共有された動画には、壁際に並ばされた弔問客と思われる人々が武装集団にハチの巣にされる様子が映っていた。
メキシコのメディアも、麻薬カルテルの縄張り争いが激化しているミチョアカン州モレリアから西に約200kmの町で弔問客が処刑されたと報じている。
ミチョアカン州の検察庁は27日深夜、「遺体は見つかっていないが、映像の撮影場所と思われる場所を捜索した結果、銃器のカートリッジと袋に入った洗浄剤を発見した」と明らかにした。「武装集団は犠牲者の遺体を運び出し、洗浄剤で血痕を洗い流したようです」
動画は現場のすぐ近くの建物内から撮影されたと伝えられているが、詳細は明らかにされていない。撮影者は武装集団から身を隠すような動きを繰り返し、銃撃が始まると数秒間建物の陰に隠れるようなしぐさを見せている。
メキシコの一部地域では麻薬の密売ルートや領土をめぐるカルテル間の抗争が増加しており、軍はミチョアカン州のカルテルが設置したとされる地雷の除去任務などにもあたっている。
ミチョアカン州ではハリスコ新生代カルテル、ニューミチョアカン・ファミリー、ロス・カバレロス・テンプラリオスなどが活動しており、それらの構成員の葬儀中に襲撃事件が発生することも珍しくない。
ハリスコ新生代カルテルは2009年に誕生した比較的新しい麻薬カルテルで、数年で国内№2に成長し、№1のシナロアカルテルや他の武装勢力と激しく対立している。
今月初めには、同州北部の町で武装集団が獄中死した男の葬儀を襲撃し、少なくとも9人が死亡した。
昨年1月にも同様の事件が発生し、9人が射殺されている。
地元メディアによると、2021年にミチョアカン州で発生した殺人事件は確認できているものだけで2,732件、国内3位だった。日本の2021年の殺人事件数は約900件。
メキシコ全土の2021年の殺人事件数は確認できているものだけで33,308件。2020年は34,554件、2019年は34,690件だった。
メキシコ政府は麻薬カルテルとの戦いを続けているが、戦争が終結する見通しは全く立っていない。犠牲者数は35万~40万人と推定されている。