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経済危機のキューバで農家が窮地に、燃料不足や停電広がる中

人口約1000万人の同国では、食料不足と物価高騰が同時に進行し、市民生活への影響が拡大している。
2026年4月20日/キューバ、首都ハバナの市場(AP通信)

米国によるエネルギー封鎖の影響で、キューバの農業が深刻な危機に直面している。燃料不足や停電が広がる中、農民たちは作物の生産や輸送に支障をきたし、国全体の食料供給が揺らいでいる。人口約1000万人の同国では、食料不足と物価高騰が同時に進行し、市民生活への影響が拡大している。

地方のある農村では農家のエドゥアルド・オビオルス・ソブレド(Eduardo Obiolos Sobredo)さんが困難な状況に直面している。ソブレドさんはトマトやキャッサバ、ソルガムなどを栽培し、学校や福祉施設に供給しているが、燃料不足により農業機械が使えず、作業効率が著しく低下した。かつては15分で終わっていた農地の整備が、現在では3日以上かかるという。

燃料供給は事実上停止しており、ソブレドさんが政府から最後にガソリンを受け取ったのは1月だった。農業機械はほぼ使えなくなり、牛や人力に頼る原始的な方法へと逆戻りしている。しかし家畜や労働力にも限りがあるため、生産量の維持は困難になっている。

問題は生産だけにとどまらない。輸送手段の不足により、収穫した農産物を市場や施設に届けることも難しくなっている。牛乳のように保存が難しい食品は特に影響が大きく、農民はわずかな燃料を使って冷凍施設まで運び、腐敗を防ぐ必要に迫られている。だが停電が頻発するため、保存体制自体も不安定である。

こうした事態の背景には米国が実施した対キューバ政策がある。米国は今年1月のベネズエラへの軍事作戦後、同国からキューバへの石油供給を事実上遮断し、さらにキューバに石油を供給する国に対して制裁や関税を示唆した。この結果、キューバは数カ月間にわたり燃料輸入が途絶える状況に陥った。

もともとキューバ経済は輸入燃料への依存度が高く、エネルギー不足は電力や水供給、輸送、医療など社会全体に連鎖的な影響を及ぼす構造にある。2026年に入ってからは電力網の不安定化や大規模停電が相次ぎ、農業活動にも直接的な打撃を与えている。

農村では高齢者や失業者が新たに農作業に従事するケースも増えている。かつてトラック運転手だった男性は燃料不足で職を失い、現在は日給わずか数ドルで農地の草刈りを行っている。高齢の元公務員も生活費を補うために農村で働き始めるなど、社会全体が生存のための労働を強いられている。

食料事情の悪化は顕著である。野菜や果物の供給量と品質は低下し、価格は多くの国民にとって手の届かない水準にまで上昇した。特に子どもや高齢者など脆弱な層への影響は深刻で、農民たちが支える福祉施設への供給も不安定化している。

この危機は1990年代のソ連崩壊後の混乱を想起させるとの声もある。当時も燃料不足で農業と輸送が麻痺し、深刻な食料危機が発生した。現在の状況はそれに匹敵、あるいはそれ以上との見方もあり、国民の不安が高まっている。

一方で、米国とキューバの間では水面下での協議も行われているが、詳細は明らかにされていない。現地の農民にとっては外交の行方よりも、日々の食料確保が優先課題となっているのが実情である。

エネルギー封鎖が続く限り、農業生産の回復は見通せない。燃料、電力、輸送という基盤が揺らぐ中で、キューバの食料供給は極めて脆弱な状態に置かれている。今回の危機はエネルギー政策と食料安全保障が密接に結びついている現実を改めて浮き彫りにした。

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