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オーストラリア政府、巨大IT大手への新課税提案、報道機関保護へ

新制度は「ニュース交渉インセンティブ」と呼ばれ、各社が現地メディアと契約を結んで対価を支払わない場合、オーストラリア国内収益の約2.25%を課税する仕組みである。
主要アプリのイメージ(Getty Images)

オーストラリア政府が28日、巨大IT企業に対して新たな課税制度を提案し、報道機関の財源確保を図る方針を打ち出した。対象となるのは米IT大手メタ、グーグル、ティックトックといった主要デジタルプラットフォームで、報道コンテンツの利用に見合った負担を求める狙いがある。

政府派7月2日までにこの法案を議会に提出する予定である。

新制度は「ニュース交渉インセンティブ」と呼ばれ、各社が現地メディアと契約を結んで対価を支払わない場合、オーストラリア国内収益の約2.25%を課税する仕組みである。政府は企業に自主的な契約締結を促しつつ、応じない場合には強制的に資金を徴収する二段構えの制度設計としている。

徴収できる額は年間約2億〜2億5000万豪ドル規模と見込まれ、主に報道機関へ配分される。配分基準には記者数などが用いられ、より多くの報道活動を行う媒体に重点的に資金が回る仕組みとなる。政府はこれにより、縮小が続く報道機関の人員維持や取材体制の強化を支援したい考えである。

背景には、デジタル化によるニュース消費の変化がある。近年、多くの人々がニュースを新聞やテレビではなくSNSや検索エンジン経由で閲覧するようになり、広告収入はプラットフォーム企業に集中する傾向が強まった。一方で、ニュースを制作する報道機関の収益は減少し、経営難や人員削減が深刻化している。政府はこうした「価値の不均衡」を是正する必要があると判断した。

オーストラリアはすでに2021年に「News Media Bargaining Code(ニュースメディア交渉規範)」を導入し、IT企業と報道機関の交渉を促してきた。この制度により一定の契約は成立したものの、近年は更新が進まず、特にメタが契約延長を見送るなど実効性の低下が指摘されていた。今回の新制度は、その抜け穴を塞ぐ目的もある。

アルバニージー(Anthony Albanese)首相は声明で、報道は民主主義を支える基盤であり、その価値に見合った対価が支払われるべきだと強調した。また、国外からの反発が予想される中でも「自国の利益のために立法化する権利がある」と述べ、政策実行への強い姿勢を示した。

一方で、対象企業の反発は強い。メタはこの制度を「実質的なデジタルサービス税」と批判し、価値の対価という考え方に疑問を呈している。グーグルも既に多くのメディアと提携していると主張し、特定企業のみを対象とする仕組みは不公平だと指摘した。ティックトックは公式なコメントを控えている。

また、政府が徴収した資金を報道機関に配分する仕組みについては、メディアの独立性に影響を与える可能性を懸念する声もある。IT企業側は国家が特定産業を財政的に支えることは市場の歪みを生むと批判している。

それでも、国内の報道機関や業界団体はおおむね歓迎の姿勢を示している。広告収入の減少や読者のオンライン移行によって経営環境が厳しさを増す中、持続可能な資金源の確保は喫緊の課題となっているためである。

今回の動きは世界的にも注目されている。カナダや欧州でも同様にIT企業にニュース対価を求める動きが広がっており、オーストラリアの制度はその先行事例と位置付けられてきた。新たな課税モデルが成功すれば、他国が追随する可能性もある。

デジタルプラットフォームと報道機関の関係は情報流通の中心がどこにあるのかという問題と直結している。今回の政策は巨大IT企業の影響力が拡大する中で、公共性の高いジャーナリズムをいかに維持するかという課題への一つの解答である。制度の成否は企業との交渉の行方とともに、報道の独立性と持続性をどこまで両立できるかにかかっている。

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