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メキシコ2025年ジャーナリスト殺害、前年から倍増=国際NGO

メキシコでは長年にわたり、麻薬戦争や汚職、組織犯罪の問題が報道の安全性に影響を及ぼしてきた。
メキシコ、西部ハリスコ州グアダラハラ、行方不明者の貼り紙(AP通信)

メキシコにおけるジャーナリスト殺害が再び増加し、報道の自由を巡る深刻な状況が浮き彫りとなっている。言論の自由を擁護する国際NGO「アーティクル19(Article 19)」が6日に公表したレポートによると、2025年にメキシコで殺害または行方不明となったジャーナリストは8人に上り、前年の4人から倍増した。

内訳は殺害7人、失踪1人で、メキシコは中南米地域において最も危険な国の一つである現状が改めて示された。事件はグアナフアト州、ゲレロ州、米国境に接するソノラ州など、麻薬カルテルの活動が活発な地域で発生している。これらの地域では麻薬カルテルなどの犯罪組織が強い影響力を持ち、報道関係者が標的となりやすい環境が続いている。

同報告はまた、殺害だけでなく、記者に対する暴力や圧力が広範に及んでいる点を指摘する。2025年には身体的攻撃が53件確認され、さらに司法制度を利用した嫌がらせは153件と過去最多を記録した。こうした圧力は報道活動の萎縮を招き、民主主義の基盤である情報公開を脅かす要因となっている。

特に問題視されているのは、加害者の一部に公的機関の関係者が含まれている点である。被害者やその家族が告発したケースでは、加害者の約3分の1が公務員であったとされる。国家権力による不当な介入や圧力が報道の自由を損なっている可能性があり、国内外から強い懸念が示されている。

2025年はシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領の就任後初めての通年にあたり、政権の治安対策や言論保護政策の実効性が問われる年でもあった。しかし現実には、暴力と脅迫が依然として続き、状況の改善は限定的とみられる。アーティクル19は政府に対してジャーナリスト保護の強化と加害者の責任追及を求めている。

さらに、米ニューヨーク州に本部を置く「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」もメキシコを「戦争状態にない国の中で最もジャーナリストにとって危険な国」と位置づけている。世界的に見ても報道関係者の死亡数は増加傾向にあり、2025年は過去最多の129人が職務中に命を落としたとされるが、その中でもメキシコの危険度は際立っている。

メキシコでは長年にわたり、麻薬戦争や汚職、組織犯罪の問題が報道の安全性に影響を及ぼしてきた。犯罪組織だけでなく、政治家や治安機関との癒着が疑われるケースもあり、真相究明を試みる記者が命を狙われる事例が後を絶たない。こうした状況は報道の萎縮を招き、市民が正確な情報にアクセスする権利を損なう恐れがある。

アーティクル19は報告書の発表に際し、「報道することが命の危険を伴うという現実を社会が受け入れてはならない」と訴えた。ジャーナリストへの暴力を「常態」として受け入れることは、民主主義そのものの弱体化につながるとの警告である。

メキシコにおけるジャーナリストへの攻撃は単なる治安問題にとどまらず、言論の自由や法の支配の根幹に関わる課題である。殺害件数の増加はその深刻さを改めて示すものであり、国内外からの監視と継続的な対策が求められている。

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