29日、赤十字病院によると、エチオピア北部ティグライ地域の州都メケレの主要病院に市内で発生した戦闘の負傷者が続々と運び込まれ、医療用物資が「危険なほど不足」しているという。
アビィ・アハメド首相は28日の声明の中で、「州都メケレを完全に支配した」と宣言した。
一方、政府と敵対するティグレ人民解放戦線(TPLF)はまだ声明を発表しておらず、準軍組織と地元民兵が受けた被害などは分かっていない。
また、戦闘地域周辺の通信網は完全に遮断されており、政府軍とTPLFの戦闘の詳細もほとんど明らかになっていない。
The situation in Mekelle today is quiet and we hope that we will be able to get urgently needed assistance into the city soon. Red Cross ambulances have thus far been able to move around and transport injured and deceased. pic.twitter.com/07XxGYUnRf
— ICRC Africa (@ICRC_Africa) November 29, 2020
赤十字国際委員会(ICRC)は、負傷者と死亡者をメケレの病院に運んだ際の様子を説明した。
ICRCエチオピアのマリア・ソレダッド氏によると、「メケレの病院にいる患者の80%が外傷を負い、医療従事者や物資が不足しているため、援助チームのスタッフと物資を病院業務に充てる必要がある」という。
マリア・ソレダッド氏:
「縫合糸、抗生物質、抗凝固剤、鎮痛剤、手袋、遺体袋、あらゆる物資が危険なほど不足している」
なお、ICRCは負傷者や死亡者の数を示しておらず、犠牲者が民間人か軍人かも明らかにしていない。
28日、アハメド首相は、「州都メケレの制圧は軍事作戦完了を意味する」と述べた。
アビィ・アハメド首相:
「軍事作戦完了と戦闘終了を共有できることを嬉しく思う。神はエチオピアと市民を祝福する」
アハメド首相によると、TPLFに捕らえられた数千人の兵士を解放し、空港と地方事務所も奪取したという。また、メケレへの侵攻は「市民に注意を払いながら実行した」と強調した。
一方、TPLFのリーダー、デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏はロイター通信に宛てたテキストメッセージの中で、政府軍の侵攻について言及した。なお、同氏の所在は不明。
デブレツィオン・ゲブレミチャエル氏:
「攻撃は私たちの自己決定権の重要性を擁護する」
TPLFは戦闘が本格化した直後の声明で、「民間人はファシスト爆撃で死傷した。私たちは野蛮な爆撃に対して報復措置を取ると誓った」と述べている。
エチオピア、ティグライ地域
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。
・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始。
・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。
・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。
・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。
・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。
・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。