インド国勢調査、世界最大規模「14億人を数える」
今回の調査では全国36の州・連邦直轄領、約64万の地区を含むすべての地域を対象に、300万人以上の調査員が動員される。
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インド政府が4月1日、約14億人を対象とする世界最大規模の国勢調査を開始した。コロナウイルスの影響で当初予定の2021年から大幅に延期されたこの調査は、1年をかけて実施される国家的事業であり、行政能力と技術革新の双方が問われる巨大プロジェクトである。
今回の調査では全国36の州・連邦直轄領、約64万の地区を含むすべての地域を対象に、300万人以上の調査員が動員される。その多くは教師などの公務員で、各家庭を一軒ずつ訪問し、居住者の情報を収集する。文字通り「すべての人」を数えるこの作業は、世界でも例を見ない規模で、インドの行政機構の総力が投入されている。
調査は大きく2段階に分かれる。第1段階では住宅の有無や設備などを記録し、第2段階で各個人の年齢、職業、教育、社会的属性など詳細なデータを収集する。こうした多層的な情報は福祉政策やインフラ整備、経済計画の基礎資料として活用される。
今回の国勢調査の特徴はデジタル技術の本格導入にある。従来の紙中心の方法に加え、スマートフォンのアプリやオンラインポータルが初めて活用される。国民は16言語に対応したサイトを通じて自己申告が可能で、その後、調査員が内容を確認する仕組みとなっている。これにより、作業の効率化とデータ処理の迅速化が期待されている。
さらに、政府は全国を細かい区域に分割して住宅を地図化する専用アプリも導入した。これにより、調査漏れを防ぎ、精度の高い人口把握を目指す。デジタル化によって集計期間の短縮も見込まれ、従来より早期に統計結果が公表される可能性がある。
もう一つの重要な特徴がカースト(身分制度)に関する詳細なデータ収集である。インドではカーストが政治や社会制度に深く関わっており、雇用や教育における優遇措置の基準ともなっている。2011年にも一部データは収集されたが、正確性への懸念から公表されなかった経緯がある。今回の調査ではより包括的な把握が試みられ、政策や選挙戦略に大きな影響を与える可能性がある。
この国勢調査は単なる人口把握にとどまらない意味を持つ。インドは2023年に中国を上回り、世界最大の人口を抱える国となった。若年層が多い人口構造は経済成長の原動力と期待される一方、雇用や教育、都市化などの課題も抱えている。正確な人口データはこうした課題に対応する政策立案に不可欠である。
また、人口データは選挙区の再編や議席配分にも影響するため、政治的にも重要性が高い。人口増加が著しい地域とそうでない地域との間で利害が対立する可能性もあり、国勢調査は国家統治の根幹に関わる作業といえる。
総額約13億ドルが投じられるこの事業は単なる統計調査を超えた「国家規模のインフラ」とも位置付けられる。紙とデジタルを融合させた新たな試みは他国の人口調査にも影響を与える可能性がある。14億人を数えるという前例のない挑戦は、インドの統治能力とデジタル化の進展を象徴する取り組みとして、国際的にも注目を集めている。
