◎スリランカは国債の利払いに苦労している。
2022年4月8日/スリランカ、首都コロンボ、ラジャパクサ大統領の辞任を求める抗議するデモ(Dinuka Liyanawatte/ロイター通信)

スリランカのデモ隊は9日、首都コロンボの中心部、商店街、大通りなどでゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の辞任を求める抗議デモを開催した。

デモの主催者はAP通信の取材に対し、「ラジャパクサ家に鉄槌を下す時が来た!」と吠えた。

市内の大通りには学生、教師、弁護士、俳優、建築家、その他多くの市民が押し寄せ、「狂人ラジャパクサ」「失せろラジャパクサ」などとスローガンを叫びながら行進した。

アルジャジーラの取材に応じた女性はスリランカの国旗と「腐敗した政治家はもういらない」「ラジャパクサからスリランカを救え」と書かれたプラカードを掲げていた。

広告業界で働いているという男性はアルジャジーラに、「殺るか殺られるかです」と語った。「初めて、あらゆる政治的・社会的信念を持つ人々が大統領を辞任させ、この危機からスリランカを救うことができる政治家に権力を譲るという譲れない要求を持って集まったのです...」

ラジャパクサ大統領は2019年の大統領選で大勝し、1年後には議席の3分の2を確保し、権力を手中に収めた。その後、大統領は兄弟のマヒンダ氏を首相に指名し、憲法を改正して大統領の権限を強化した。

さらにラジャパクサ大統領は、バジル氏を財務相、チャマル氏を灌漑(かんがい)相、ナマル氏をスポーツ相に就かせることにも成功した。

有権者は当時、少なくとも259人が死亡したISISの連続爆破テロに辟易し、ラジャパクサ兄弟であれば治安を高め、経済を安定させてくれると信じていた。

これはラージャパクサ兄弟が約25年間続いたタミルの反政府勢力との内戦を終結させたことも影響していた。当時、マヒンダ氏が大統領、ゴタバヤ氏は国防相を務めていた。

コロンボのデモに参加した男性はAP通信の取材に対し、「ラジャパクサ兄弟は事態を悪化させ、無能で正しい判断ができないことを証明した」と語った。

スリランカは外貨を獲得できないプロジェクトに数十億ドルを費やしたことなどによる過去に類を見ない経済危機に悩まされている。同国は今年、対外債務を70億ドル近く処理する予定だが、外貨準備は3月中頃時点で4億ドルを下回った。

外貨不足で日用品の輸入代金を支払えなくなった結果、食料、医薬品、灯油、ありとあらゆる物資が不足し、インフレを加速させた。電力会社は火力発電に必要な燃料を確保できず、停電が常態化(最大1日13時間)し、国民だけでなく企業も大打撃を受けている。

デモ隊は政府の不作為が危機を悪化させ、経済を崩壊させたと叫んだ。

政府の不作為には政府の歳入を激減させた「無謀な減税」や、債務の返済で外貨が不足しているにもかかわらず国際通貨基金(IMF)への支援要請が遅れたことなども含まれる。

政府の歳入の柱である観光業はコロナウイルスの感染拡大で壊滅的な打撃を受け、外貨準備高はこの2年間で70%急減した。

また政府は昨年6月、「100%有機産業プログラム」を開始し、農薬の使用を原則禁止した。その結果、農家の負担は激増し、品種によっては生産量が最大50%減少し、深刻な食糧不足を引きおこした。その後、政府はIMFに支援を求め、数十万トンの米を輸入せざるを得なくなった。

作家のガラパティ氏はアルジャジーラに、「この2年間、あいつは何をしたのだろう?何もしていない」と説明した。「あいつに国を任せたのが間違いでした。ラジャパクサ家は今すぐ消えるべきです」

2022年3月31日/スリランカ、首都コロンボの大統領邸近く、政府に抗議する市民と警察(Eranga Jayawardena/AP通信)

国民の懸念に耳を貸そうとしないラジャパクサ兄弟の態度も国民の怒りに火をつけた。デモ隊は3月初旬に街頭デモを本格的に始め、政府に対策を講じるよう強く促したが、政府の中にはデモ隊を「テロリスト」と見なす者や、危機の深刻さを軽視する者もいたと伝えられている。

3月下旬にデモが拡大すると、ラジャパクサ大統領は非常事態を宣言し、夜間外出禁止令を発令した。しかし、デモ隊は経済対策ではなくデモ対策に奮闘する大統領に激怒し、外出禁止令を却下し、警察に石を投げ、軍隊のバスに火をつけ、大統領は数日後、非常事態を取り消した。

国内で俳優として活動するヴィカラマタントリ氏はアルジャジーラに、「ラジャパクサ家は国民を馬鹿にした」と語った。「今すぐ暫定政府を樹立し、大統領に権力を集中させた憲法を改正しなければなりません」

ラジャパクサ家の汚職を追求するという人々もいる。

首都コロンボの郊外で生活する女性は、「国民は飢えているのに、ラジャパクサと仲間たちは豊かな暮らしをしている」と憤慨した様子で語った。「独裁者の身ぐるみを剥がすために来ました。あの男を追放し、汚職で収監するまで私たちは止まりません」

「盗まれた金を返せ」と書かれたプラカードを掲げた男性はラジャパクサ家の資産を凍結するよう訴えた。「ラジャパクサは180億ドル(約2兆2000億円)以上の資産を所有しているという噂があります。これは、今年の対外債務の3倍にあたります」

ラジャパクサ大統領は資産を公表していないため、180億ドルが事実か否かは不明である。

一方、政府と与党はラジャパクサ大統領を擁護している。与党のフェルナンド議員は6日の議会演説で、「大統領はいかなる状況でも辞任しない」と述べ、政府は現在の危機に立ち向かうと約束した。

ラジャパクサ大統領は弟のバジル財務相を解任し、新しい中央銀行総裁を任命し、IMFとの交渉を加速させる協議会を発足させた。

しかし、9日のデモに参加した人々はラジャパクサ大統領の対応を却下し、辞任を要求した。

デモの主催者は聴衆に、「スリランカをガタガタにした男は権力の座にしがみつこうとしている」と呼びかけた。「ラジャパクサにスリランカを立て直すことはできません。あの男にさよならを言う日がきました」

非営利団体ロウ・アンド・ソサエティ・トラストの活動家は政府の対応を「傲慢」と評し、糾弾した。「私たちはこの瞬間をずっと待っていました。スリランカの人々は何かを変えるために集まってきたのです。このデモはあの男を追放するためのものでなく、独裁を許したこの国のシステムを変えるためのものです」

主催者は「立ち向かえ」と聴衆に呼びかけた。

2020年8月9日/スリランカ、首都コロンボ、ラジャパクサ大統領(右)と兄弟のマヒンダ・ラジャパクサ首相(Dinuka Liyanawatte/ロイター通信)
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