◎スリランカ議会のアベイワデナ議長はラジャパクサ大統領の辞表を14日に受理した。
2022年7月15日/スリランカ、首都コロンボの大統領府前(Eranga Jayawardena/AP通信)

スリランカ議会のアベイワデナ(Mahinda Abeywardana)議長は15日、シンガポールに逃亡したラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領の後任を選出するために議会を召集すると発表した。

アベイワデナは16日に議会を召集し、新大統領選出プロセスを開始するとした。ラジャパクサ氏はメールで辞表を提出している。

政府報道官によると、このプロセスは7日以内に終わる見込みだという。

アベイワデナ氏はラジャパクサ氏の辞表を14日に受理したため、法的にはウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相が暫定大統領を務めることになる。

暫定大統領は就任後30日以内に国会議員の中から新大統領を選ぶ選挙を実施し、その勝者は2024年後半までラジャパクサ氏の後任として任期を全うすることになる。

新大統領は新首相を任命する。ただし、これも国会の承認が必要であり、新連立政権の準備を進める野党から選ばれる見込みである。

スリランカは現在、隣国インドの信用枠で何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。

国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。

国民は調理用ガス、ガソリン、食料、その他日用品の入手に苦労しており、その影響は貧困層から中産階級に拡大した。

ラジャパクサ氏は抗議デモの高まりを受け、13日に国外に逃亡した。報道によると、同氏は14日にシンガポールに到着したという。

アベイワデナ氏は14日にラジャパクサ氏からメールで辞表を受け取り、受理した。

4月から抗議デモに参加している男性はAFP通信の取材に対し、「あの男に説明責任を果たさせることが大切だ」と語った。「ラジャパクサを倒したことには満足していますが、不正で得た資産の持ち逃げは許されません。新大統領は米国に支援を求めるべきです...」

一部の活動家はラジャパクサ一族が不正で財を成したと主張しているが、事実か否かは不明である。

大統領公邸などを占領したデモ隊は14日に撤退し、首都コロンボは平穏を取り戻した。しかし、新政権発足に向けた野党の協議は難航しているとみられる。

ウィクラマシンハ氏は国際通貨基金(IMF)、米国などの関係国、債権者と協議を行っているとみられる。同氏は以前、「破綻国家に救済を提供してくれる機関は限られている」と弱気な発言をしていた。

抗議デモは何とか収束したが、一歩間違えれば再び爆発する可能性もある。ウィクラマシンハ氏は14日、混乱が生じた場合は「必要な措置」を取るよう軍に命じており、懸念が高まっている。

アベイワルダナ氏は記者団に対し、「新大統領選出プロセスは迅速かつ透明性のあるものになる」と約束した。

スリランカの債務はラジャパクサ氏率いる前政権の「後先考えない無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」などで膨れ上がり、「中国の債務トラップ」と「コロナの感染拡大に伴う観光業の衰退」がとどめとなり、債務不履行に陥った。

ラジャパクサ氏は汚職疑惑を否定しているが、自身の政策の一部が債務不履行を早める引き金になったことは認めている。

数カ月にわたる抗議デモは先週末ピークに達し、デモ隊は大統領公邸や首相公邸などを襲撃した。首相府も13日に制圧された。

公邸のソファに寝っ転がったり、プールで泳いだり、ジムで身体を鍛えたり、ポーカーを楽しんだりするデモ隊の姿は世界の注目を集めた。

デモ隊は新政権発足まで公邸にとどまると宣言していたが、14日に戦術を変更した。報道によると、デモ隊のリーダー格は抗議が暴力に発展すれば国民の理解を得られないとし、撤退を決めたという。

デモ隊のリーダーを自称する男性はAP通信の取材に対し、「ラジャパクサが去った今、占領を維持しても意味がないと思いました」と語った。

大統領公邸の戸締りをしたという男性抗議者は地元メディアのインタビューの中で、「私たちの闘いはまだ終わっていない」と語った。「あの男が贅沢な暮らしをしていたことが分かりました。あの男が大きなベッドで眠っていた時、貧しい人々は子供のミルクも買えず困り果てていたのです」

ラジャパクサ氏とファーストレディは13日未明に軍用機で国外に脱出し、モルディブを経由してシンガポール入りした。シンガポール政府によると、同氏は亡命を希望していないという。

ラジャパクサ氏は大統領の免責特権が機能しているうちにスリランカを去りたかったのだろう。

2022年7月15日/スリランカ、首都コロンボの政府庁舎、アベイワデナ議会議長(Rafiq Maqbool/AP通信)
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