SHARE:

コロンビア政府、野生カバを駆除する計画承認、麻薬王の遺産


コロンビアに生息するカバは1980年代にエスコバルが私設動物園のためにアフリカから持ち込んだ4頭が起源である。
2022年4月12日/コロンビア、川を泳ぐ野性のカバ(Fernando Vergara/AP通信)

南米コロンビア政府は13日、野生化して増殖を続けるカバの個体数を抑制するため、数十頭を殺処分する計画を正式に承認した。かつて麻薬王パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)が持ち込んだカバの子孫が引き起こす問題は、環境と社会の双方に影響を及ぼしており、政府は苦渋の決断を迫られた形だ。

環境省によると、対象となるカバは最大で約80頭。開始時期は明らかにされていないが、当局は「このままでは個体数の制御が不可能になる」として、早期の実施が必要だと強調している。これまで去勢手術や動物園への移送など非致死的な対策が試みられてきたが、いずれも高コストで効果が限定的だったとしている。

コロンビアに生息するカバは1980年代にエスコバルが私設動物園のためにアフリカから持ち込んだ4頭が起源である。彼の死後、動物たちは放置され、やがて野生化して繁殖を続けた。現在では約170頭に増加し、南米で唯一の野生カバ集団となっている。

近年、カバは元の生息地であるマグダレナ川流域からさらに広範囲へ拡散し、農地や河川で住民と接触する事例も増えている。大型で攻撃性の高い動物であるため、人身被害の懸念も指摘されているほか、在来種との競合も深刻化している。特にマナティーなどの水生生物が生息域を追われているとみられ、生態系への影響が問題視されている。

一方で、カバは観光資源として地域経済に寄与している側面もある。かつてのエスコバルの邸宅周辺ではカバ観察ツアーや関連グッズの販売が行われ、観光客を引き付けている。そのため、地元住民の間でも対応をめぐって意見が分かれている。

動物愛護団体は今回の決定に強く反発している。殺処分ではなく、避妊や移送といった代替策を求め、「暴力的手段は誤った前例になる」と批判している。しかし政府側は海外への移送についても受け入れ先の確保や遺伝的問題、疾病リスクなどの課題があり、現実的ではないとしている。

専門家は対策を講じなければ個体数が将来的に1000頭規模に増加する可能性があると警告している。すでに繁殖速度は高く、自然の捕食者が存在しないことが増加に拍車をかけている。

今回の決定は外来種管理の難しさを象徴する事例といえる。エスコバルの遺産ともいえるカバは観光資源としての魅力と、生態系破壊の脅威という二面性を併せ持つ存在となった。政府は環境保全を優先する姿勢を示したが、倫理的議論や地域社会への影響を含め、問題の解決にはなお時間を要するとみられる。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします