SHARE:

チリ大統領、71年ぶりにボリビアを公式訪問、南米の右傾化で歴史的対立の緩和目指す

両国の関係には、19世紀の戦争に端を発する深い溝がある。
2026年10月16日/ボリビア、首都ラパス、パス大統領(右)とチリのカスト大統領(AP通信)

チリのカスト(José Antonio Kast)大統領が16日、隣国ボリビアの首都ラパスを訪問した。チリ大統領によるボリビアへの公式訪問は71年ぶりとなる。両国では右派派のパス(Rodrigo Paz)大統領とカスト氏が相次いで政権を握り、トランプ(Donald Trump)米大統領と協調姿勢を示している。南米で保守・右派勢力が影響力を強める中、両国は長年の対立を緩和し、経済や安全保障分野での協力拡大を目指す。

両国の関係には、19世紀の戦争に端を発する深い溝がある。1879~1884年の戦争でボリビアは太平洋沿岸の領土を失い、内陸国となった。ボリビアは現在も主権を伴う太平洋への出口を求めているが、チリとの大使級外交関係は1978年以来途絶えたままだ。両国は領事館を通じた関係を維持し、移民や貿易などでは協力してきたものの、今回の訪問でも正式な外交関係の全面復活は議題に含まれなかった。

カスト氏は大統領府前の広場で、パス氏から軍の儀仗を伴う歓迎を受けた。両首脳は貿易や国境警備について協議し、鉱業やエネルギー分野での協定を締結する予定だ。両国の国境は約861キロに及び、組織犯罪や麻薬密売への対策が共通課題となっている。両国はトランプ政権が主導する麻薬対策の地域連合「シールド・オブ・ジ・アメリカズ(米州の盾)」にも参加している。

経済面でも協力を進める理由がある。ボリビアは外国貿易の約70%をチリ北部の港湾経由で行っており、チリとの関係改善は物流の安定に直結する。パス氏は一方、パラグアイ川・パラナ川を通じた大西洋へのアクセスをチリに提案している。

ただし、ボリビアが長年求めてきた太平洋への領土回廊は今回の協議から外れた。ボリビアのモラレス(Evo Morales)元大統領は16日、これを歴史的記憶への侮辱と批判した。

ボリビア政府は要求を放棄したわけではないと説明するが、歴史問題の解決にはなお時間がかかる。今回の訪問は関係改善への一歩となる一方、両国間に残る根深い課題も浮き彫りにした。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ