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米控訴裁判所、オンライン診療による経口中絶薬の処方禁じる

ミフェプリストンは2000年にFDAが承認した薬剤で、別の薬剤ミソプロストールと併用することで妊娠10週程度までの人工妊娠中絶に用いられる。
2021年10月2日/テキサス州ヒューストン、中絶禁止法に反対する抗議者(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

ルイジアナ州の連邦控訴裁判所が中絶薬ミフェプリストンのオンライン診療による処方および郵送配布を全米で差し止める命令を出した。現地メディアが2日に報じた。判決は即時発効し、従来認められてきたオンライン診療と薬剤の郵送による入手が大きく制限されることとなった。

今回の判断を下したのはルイジアナ州の第5巡回区控訴裁判所の3人の判事による合議体。訴訟は同州などが、食品医薬品局(FDA)が2023年に導入した規制緩和措置の合法性を争って提起したもので、同措置はミフェプリストンを対面診療なしで処方し、薬局や郵送で患者に届けることを可能にしていた。裁判所はこの規制緩和について、科学的根拠や手続きの妥当性に疑問があると判断し、対面での交付を義務付ける従来の要件を事実上復活させた。

ミフェプリストンは2000年にFDAが承認した薬剤で、別の薬剤ミソプロストールと併用することで妊娠10週程度までの人工妊娠中絶に用いられる。近年では中絶の過半数が薬物による方法で行われており、特に2022年の連邦最高裁による「ロー対ウェイド判決」覆し以降、遠隔医療を通じた利用が急増していた。

こうした中での今回の判断は、州ごとの中絶規制を超えて全国的に影響を及ぼす点が特徴である。郵送による薬剤提供が停止されることで、オンライン診療を利用していた患者は医療機関に直接赴く必要が生じる。専門家は地方在住者や低所得層にとってアクセスが一層困難になる可能性を指摘している。

一方、この決定は中絶反対派からは歓迎されている。彼らは郵送による薬剤提供が州の中絶禁止政策を実質的に骨抜きにしていると主張してきた。これに対し、製薬企業やリプロダクティブ・ヘルスの擁護団体は、ミフェプリストンの安全性は長年の使用実績で確認されていると反論し、判決は科学的知見よりも政治的判断に基づくものだと批判している。

また、医療現場への影響も懸念されている。これまでオンライン診療と郵送を組み合わせたサービスは中絶が制限されている州でも一定のアクセスを確保する手段として機能してきたが、その主要な経路が遮断されることになるためである。薬剤を製造する企業側も、薬局や患者に混乱が生じるとして対応を迫られている。

今回の命令は暫定的な性格を持ち、訴訟は今後も続く見通しであり、最終的には連邦最高裁の判断に委ねられる可能性が高い。すでに関係者は上級審への上訴を視野に入れており、全米の中絶アクセスをめぐる法的攻防は新たな局面に入ったといえる。

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