米司法省に起訴されたメキシコ州知事と市長が休職、麻薬取引に関与か
米当局は今週、両氏を含む現職および元政府関係者計10人を麻薬密輸や武器関連犯罪で訴追した。
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メキシコ西部シナロア州の知事と市長が米国による麻薬取引関与の起訴を受けて相次いで職務を離れる事態となり、同国の政治と治安をめぐる緊張が一段と高まっている。問題となっているのはシナロア州のルベン・ロチャモヤ(Rubén Rocha Moya)知事と州都クリアカンのガメス(Juan de Dios Gámez Mendívil)市長で、両者は米司法省の起訴を受けて休職を表明した。
米当局は今週、両氏を含む現職および元政府関係者計10人を麻薬密輸や武器関連犯罪で訴追した。起訴状によると、被告たちはシナロア・カルテルと結託し、合成麻薬フェンタニルやコカイン、ヘロイン、メタンフェタミンなどを米国へ大量に密輸するのを支援したとされる。見返りとして数百万ドル規模の賄賂や政治的支援を受けていた疑いがある。
ロチャモヤ氏は声明で「告発は虚偽で悪意に満ちている」と全面的に否定し、自らの潔白を証明するために職務を一時離れると説明した。ガメス氏も同様に関与を否定している。両者とも辞任ではなく、調査に対応するための休職という位置付けを強調している。
今回の起訴はメキシコ政界に大きな衝撃を与えた。特にロチャモヤ氏は与党・国家再生運動(MORENA)の有力政治家で、現職知事が米国により麻薬犯罪で起訴されるのは極めて異例である。事件は長年にわたり指摘されてきた政治と麻薬組織の癒着問題を改めて浮き彫りにした。
一方、メキシコのシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は米国の対応について、距離を置く姿勢を示している。シェインバウム氏は証拠の信頼性に疑問を呈しつつ、「捜査はメキシコ国内で行う」と強調し、主権尊重の立場を崩していない。米側が求めている身柄引き渡しについても、現時点で応じるかは不透明である。
背景には、米国の対メキシコ圧力の強まりがある。トランプ政権はフェンタニル流入の抑制を最優先課題と位置付け、麻薬対策でより強硬な姿勢を取ってきた。今回の起訴は犯罪組織だけでなく政治家自身を直接標的とした点で、従来の対策から一歩踏み込んだものとみられる。
しかし、こうした動きは両国関係に摩擦も生んでいる。メキシコ側では米国が自国の政治問題に介入しているとの反発が強く、国内での捜査と司法手続きを優先すべきだとの声が上がっている。シェインバウム政権は対米協力と主権維持の間で難しい対応を迫られている。
今回の事件は麻薬戦争が単なる治安問題にとどまらず、政治体制そのものに影響を及ぼしている現実を示している。政府内部にまで疑惑が及んだことで、国民の政治不信がさらに深まる可能性もある。今後の捜査の行方とともに、メキシコがどのように腐敗と麻薬組織の影響に対処していくのかが今後の焦点となる。
