2021年6月10日/フランス中部ヴァランスの裁判所(AP Photo通信/Laurent Cirpriani)

6月10日、フランスの裁判所はエマニュエル・マクロン大統領を平手打ちした自称「愛国者」のダミアン・タレル被告(28歳)に懲役4か月、執行猶予14カ月の有罪判決を言い渡した。

タレル被告は合わせて、公職に就くことと、合法的な武器の所持を5年間禁じられた。

タレル被告の弁護士は公判の中で、「攻撃は衝動的かつ非計画的であり、フランスの衰退に対する怒りが引き起こした」と述べた。

現地メディアによると、タレル被告は判決を言い渡された後も感情をほとんど表に出さなかったという。傍聴席で判決を聞いたタレル被告のガールフレンドは泣き崩れたと伝えられている。

タレル被告は8日、「ツアー・ド・フランス」と呼ばれる遊説イベントでドローム県のタン=レルミタージュを訪問していたマクロン大統領にビンタを叩き込み、逮捕された。

警察当局によると、タレル被告は自分を右翼または極右の愛国者と呼び、2018年と2019年にマクロン政権を動揺させたイエローベスト抗議運動のメンバーだと主張したという。

イエローベスト抗議運動は反ユダヤ主義を掲げる極右が主催したもので、ユダヤ人墓地にナチスのカギ十字を落書きし物議を醸した。

公判を傍聴したメディア関係者によると、タレル被告はマクロン大統領にビンタを叩き込んだことを認めたうえで、「彼の表情に嫌悪感を感じ、暴力を振るいました」と語ったという。「衝動的な反応でした...私自身、殴ったことに驚きました」

タレル被告は友人と一緒にクリームパイや卵を準備しようと考えたが、協議の結果、襲撃計画は取り下げられたと述べ、「衝動的にビンタしてしまった」と主張した。「エマニュエル・マクロンはフランスの衰退を象徴しています...」

マクロン大統領は判決に関する声明を出していないが、「民主主義に対する暴力が正当化されたことはいまだかつてない」と述べていた。

マクロン大統領はBFM-TVのインタビューの中で、「私は現地で待っていてくれた人々に直接挨拶できたことに満足しています」と述べた。「愚かな暴力より、人々と話せたことの方が重要です。平手打ちは大したことではありません」

2021年6月10日/フランス中部ヴァランスの裁判所2(AP Photo通信/Laurent Cirpriani)

検察によると、タレル被告と一緒に逮捕された自称アーサー・C被告は後日、武器の不法所持で裁判にかけられる予定だという。

検察は9日、アーサー・C被告の自宅を家宅捜索し、中世の剣やライフルなどと一緒にアドルフ・ヒトラーの著書、我が闘争のコピーと、ロシア革命を象徴する赤旗を押収したと述べた。

フランスでは被告が裁判にかけられるまでに数か月から数年かかることも珍しくないが、今回は特別な緊急プロセスを使用して、ビンタからわずか2日で裁判を行った。タレル被告は緊急プロセスに反対しなかったと伝えられている。控訴期限は判決の言い渡しから10日以内。

タレル被告はフランス王国時代の雄叫びとして知られている「モンジョイ!サン・ドニ!」と大声で叫び、マクロン大統領をパチンとビンタした。

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