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イタリアで逮捕された中国人ハッカー、米国に身柄引き渡し

問題の人物は中国国籍の徐沢偉(Xu Zewei)容疑者で、イタリア北部ミラノで2025年7月、米国の要請に基づき逮捕されていた。
サイバー犯罪のイメージ図(Getty Images)

イタリア政府が米国当局に指名手配されていた中国人ハッカーの身柄を米国へ引き渡したことが明らかになり、サイバー犯罪をめぐる国際協力と米中対立の影響が改めて浮き彫りとなった。

問題の人物は中国国籍の徐沢偉(Xu Zewei)容疑者で、イタリア北部ミラノで2025年7月、米国の要請に基づき逮捕されていた。イタリア当局はその後の司法手続きを経て、4月27日に米国への引き渡しを実施した。

米司法省によると、容疑者は2020年から2021年にかけて、米国内の大学や研究機関のコンピューターシステムに不正侵入し、新型コロナウイルスに関するワクチンや治療法の研究データを盗み出した疑いが持たれている。起訴内容には通信詐欺や個人情報搾取、不正アクセスなどが含まれる。

さらに米当局は、容疑者が中国の国家安全省が関与するサイバー諜報活動の一員として行動していたと主張している。容疑者は「ハフニウム(Hafnium)」と呼ばれるハッカー集団に所属し、世界中の数千台規模のコンピューターに侵入したとされ、米国は国家安全保障上の重大な脅威と位置付けている。

一方、中国政府はこれらの疑惑を強く否定している。中国外務省は今回の引き渡しについて、「政治的操作に基づくでっち上げ」と批判し、イタリアに対して決定の見直しを求めていた。米国による司法手続きそのものにも疑問を呈し、対立姿勢を鮮明にしている。

容疑者本人も一貫して容疑を否認しており、弁護側は「人違い」であると主張している。逮捕当初から、同姓同名の人物との混同や個人情報の盗用の可能性を指摘し、今後の米国内での裁判で争われる見通しである。

今回の事件はサイバー空間を舞台とした国家間の緊張を象徴する事例といえる。近年、各国政府はハッキングや情報窃取をめぐる摘発を強化し、とりわけ新型コロナ関連の研究データは国際的な標的となってきた。重要技術や医療情報を巡る争いは安全保障の領域にも直結している。

イタリアが米国の要請に応じて引き渡しに踏み切った背景には司法協力の枠組みだけでなく、欧米諸国間でのサイバー防衛強化の流れがあるとみられる。一方で、中国との関係悪化を懸念する声もあり、外交的な影響も避けられない。

国境を越えて行われるサイバー犯罪に対し、各国がどのように連携し、また政治的対立とどう折り合いをつけるのか。今回の引き渡しはその難しさと重要性を示す象徴的な事例となっている。

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