◎2022仏大統領選挙は4月10日に行われる予定。第1ラウンドで過半数を獲得する候補者が出なかった場合は4月24日の決選投票で勝者を決める。
2021年12月5日/フランス、パリの市街地、エリック・ゼムール氏に反対する抗議デモ(Michel Spingler/AP通信)

来年のフランス大統領選挙に立候補したテレビ評論家のエリック・ゼムール氏は5日、セーヌ=サン=ドニ県で初の極右集会を開催し、「反人権・反移民・反イスラム・反ゲイ」を追及すると支持者に誓った。

一方、パリではゼムール氏の公約に反対する人権活動や団体が抗議デモを主催し、極右候補に投票しないよう呼びかけた。

2022仏大統領選挙は4月10日に行われる予定。第1ラウンドで過半数を獲得する候補者が出なかった場合は4月24日の決選投票で勝者を決める。

ヘイトスピーチ裁判で有罪判決を受けた63歳のゼムール氏は、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトを意識し、「フランスに不可能はない」という選挙スローガンを発表した。「私が選挙に勝った場合、フランスは世界で最も美しい国に生まれ変わります...」

支持者たちはフランスの国家を歌い、「ゼムール大統領万歳!」と叫び、「勝つ!勝つ!勝つ!勝つ!」と連呼しながら国旗を振り回した。

AFP通信などによると、「人種差別禁止」と書かれたセーターを着た人権活動家が会場内で右翼に殴打され、会場の外へ連行されたという。AP通信は複数人が暴行を受けたと報じた。

ゼムール氏は演説前に人権活動家と思われる男性にタックルを食らったが、そのまま登壇した。

フランスのテレビ番組の司会者はゼムール氏の演説中にブーイングを発し、警備員に連行された。テレビ局はその後会場に戻ることを許可されたが、ゼムール氏は演説の中でリベラル系メディアを厳しく批判した。「メディアは私が15年前に書いた本について騒ぎ立てています。彼らは私の私生活を覗き見し、私を極右指導者と嘲笑しています。敵は私の政治的死を望んでいます。ジャーナリストは私の社会的死を望んでいます。そして、ジハード主義者は私の死を望んでいます」

ゼムール氏は移民や難民に自国のアイデンティティを守るのではなく、フランス文化を吸収し「適用」するよう強く求めている。

ゼムール氏は支持者に、「フランスを再建し、フランスの(アイデンティティの)消滅を望む者たちに立ち向かう時が来た」と述べ、喝采を浴びた。

一方、パリの市街地に集まった数千人の抗議者は、「パリは極右を沈黙させる」と書いた横断幕を掲げ、ゼムール氏の公約に抗議した。

公共放送フランス・テレビジョンによると、ゼムール氏はここ数カ月の間に、極右の国民党を率いるマリーヌ・ル・ペン党首の支持者を大きく吸い上げた可能性が高いという。ル・ペン党首は2017仏大統領選の第1ラウンドで2位につけ決戦投票に臨んだが、エマニュエル・マクロン大統領にダブルスコアで敗れた。

マクロン大統領は2期目を目指すと期待されているが、まだ立候補を表明していない。

3度目の正直を目指す左翼戦線の極左指導者ジャン=リュック・メレンチョン氏もパリで集会を開催し、数千人を集めた。リベラル派は極右を打倒すると誓っており、社会党のパリ市長アンヌ・イダルゴ氏と元グリーンピース活動家のヤニック・ジャドー氏などが立候補を表明している。

フランス政府は公の集会でのマスク着用を義務付けているが、ゼムール集会の支持者の大半はマスクを外し、コロナ対策そのものを廃止するよう呼びかけた。

2021年12月5日/フランス、セーヌ=サン=ドニ県のビルパントで開催された極右集会、2022大統領選に立候補したエリック・ゼムール氏(Rafael Yaghobzadeh/AP通信)
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