ベルギー政府、原子力発電所の国有化を計画、計7基買収へ
ベルギーは2003年に原子力発電からの段階的撤退を決定し、2025年までにすべての原子炉を停止する方針を掲げてきた。
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ベルギー政府が4月30日、国内の原子力発電所の国有化に踏み切る方針を示した。エネルギー安全保障の強化と電力供給の安定化を目的としたもので、長年続いてきた「脱原発政策」からの大きな転換となる。
報道によると、政府はフランスのエネルギー大手エンジーが保有する原子力関連資産の買収に向けて交渉を開始した。対象にはエンジーの子会社が運営する国内すべての原子炉が含まれ、ベルギーにある計7基の原子炉が事実上国の管理下に置かれる見通しである。これにより、これまで進められてきた原発の廃炉作業は一時停止される可能性が高い。
ベルギーは2003年に原子力発電からの段階的撤退を決定し、2025年までにすべての原子炉を停止する方針を掲げてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を契機とするエネルギー価格の高騰や供給不安を受け、政策の見直しが進んだ。2025年には脱原発法そのものが撤廃され、既存炉の延長運転や新設の検討が進められている。
今回の国有化計画はこうした流れをさらに一歩進めるものだ。デウェーフェル(Bart De Wever)首相は安価で持続可能な電力を確保し、化石燃料への依存を減らす狙いを強調している。国家が直接運営に関与することで、電力供給の主導権を確保し、価格変動や外部リスクへの耐性を高める考えである。
背景には、原発が依然として同国の重要な電源であるという事情がある。ベルギーでは原発が電力の約4割を担っており、再生可能エネルギーの拡大が進む中でも、安定したベースロード電源としての役割は大きい。だが、複数の原子炉がすでに閉鎖された結果、電力輸入への依存度が高まり、エネルギー安全保障上の懸念が指摘されていた。
もっとも、国有化には課題も多い。老朽化した原子炉の再稼働や維持には巨額の投資が必要で、放射性廃棄物の処理費用や安全対策の負担も国が引き受けることになる。また、欧州連合(EU)の競争政策や国家補助規制との整合性も問われる可能性がある。
それでもベルギー政府はエネルギーを国家の戦略資産と位置づけ、長期的な安定供給を優先する姿勢を明確にした。再生可能エネルギーの拡大と並行しつつ、原子力を含めた多様な電源構成を確保することで、脱炭素と安全保障を両立させる狙いである。
欧州では近年、原子力の再評価が進んでいる。気候変動対策とエネルギー危機への対応という二重の課題に直面する中で、ベルギーの決断は他国の政策にも影響を与える可能性がある。今回の国有化計画は単なるエネルギー政策の修正にとどまらず、国家と電力の関係を再定義する動きとして注目される。
