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イラン経済、厳しい実情、米イスラエル空爆で1200万人が失業の危機

米国は経済圧力でイランを屈服させようとし、イランは持久力で米国の政治的限界を突こうとする構図が続いている。
2026年1月19日/イラン、首都テヘランの通り(ロイター通信)

米国とイスラエルによる攻撃と経済封鎖の影響で、イラン経済が深刻な打撃を受けている。それにもかかわらず、イラン指導部は最終的にトランプ(Donald Trump)米大統領が譲歩するとみて強硬姿勢を崩していない。

現地メディアによると、米イスラエルによる5週間以上にわたる空爆により、イラン国内の数千の工場が被害を受け、生産活動が広範に停滞した。とりわけ鉄鋼や石油化学といった基幹産業は壊滅的な打撃を受け、主要工場の多くが操業停止に追い込まれている。これにより金属やプラスチック製品の供給が滞り、関連産業にも連鎖的な影響が広がっている。

雇用への影響も深刻である。報道によると、戦争によって少なくとも100万人が職を失い、さらに1000万~1200万人、労働人口の約半数が失業の危機に直面している。中小企業も打撃を受け、インターネット規制の強化によって電子商取引が停滞、都市部の商業活動も縮小している。

生活面でも国民の負担は急激に増している。食料価格が急騰し、鶏肉はこの2カ月で約75%、牛肉や羊肉は70%上昇したほか、乳製品も大幅に値上がりした。物流の混乱や生産減少が供給不足を招き、インフレ圧力を一段と強めている。こうした経済悪化が社会不安の再燃につながる可能性も指摘されている。

さらに、米国による海上逆封鎖がイラン経済を追い詰めている。輸出の要である石油や工業製品の流通が制限され、外貨収入が大きく減少した。鉄鋼や石油化学製品の輸出停止は国家財政にも打撃を与えている。一方で、イランはホルムズ海峡を事実上掌握しており、世界のエネルギー輸送の要衝を押さえることで対抗手段を保持している。

このためイラン指導部は、長年の制裁下で培った「自給自足型経済」の耐久力を背景に、持久戦に持ち込めば米側が先に譲歩すると判断している。ホルムズ海峡の封鎖解除を交渉カードとし、制裁解除や戦闘終結を引き出す戦略である。実際、海峡封鎖は世界のエネルギー供給を揺るがし、国際経済にも影響を与えている。

しかし、こうした強硬姿勢は国内の疲弊と裏腹である。産業基盤の損壊、失業の拡大、物価高騰という三重苦が国民生活を圧迫し、体制の安定性にも影を落としている。それでも指導部は、外圧に屈することは体制の正統性を損なうとして、譲歩よりも対抗を選んでいる。

結果として、米国は経済圧力でイランを屈服させようとし、イランは持久力で米国の政治的限界を突こうとする構図が続いている。双方とも決定的な打開策を見いだせないまま、経済と安全保障が絡み合う消耗戦は長期化の様相を呈している。

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