主要企業の広告ボイコットは、痛い

Facebookにプレッシャーをかけた世界の主要企業は、それが一定の効果を上げると確信し、行動を開始した。SNS上に蔓延するヘイト(悪意のある投稿、人種差別を助長する投稿など)に対し、コカ・コーラなどの世界的企業が広告配信を停止すると発表し、Facebookはダメージを受けた。

18世紀後半、イギリス国内で強まった奴隷制度廃止運動により、奴隷として扱われている人々が生産”させられた”商品の不買圧力が強まった。結果、約30万人が砂糖の購入を控え、同制度廃止に強烈な圧力をかけ、さらに生産者も大ダメージを受けたのである。

Stop Hate for Profit(ヘイトで金儲けするな)」キャンペーンは、SNSを政治ツールとして使うトランプ大統領に対する圧力運動と言っても過言ではない。大統領は誤った政治情報、人種差別を肯定する情報、ライバルの誹謗中傷を発信している。そして、Facebookが大統領のヘイトを容認したため、膨大な広告料を支払っている大企業は、怒った。

コカ・コーラ、ユニリーバ、スターバックスを含む一連の主要企業は、Facebookや他のSNS企業に対し、悪意のある投稿への措置(文書の削除、アカウント停止など)を求めている。

なお、RedditやTwitchなどのオンラインプラットフォームは、独自のヘイト対策を既に講じている。これにより悪意のある投稿自体が禁じられているため、上記の主要企業から圧力を受けることは”現時点では”ない。

Facebookの世界利用者数は24億人超。同社傘下のInstagramは約10億人。世界の主要企業はこぞって膨大な広告料を支払い、Facebookに広告の配信を依頼する。結果、投稿文書や写真の横に企業広告が添付され、世界中の利用者がそれを目にするのだ。

Facebookの収入の大部分は、企業から支払われる広告料が占めている。広告ボイコットキャンペーンは、同社に大ダメージを与えるだろう。

アビバ・インベスターズのデビッド・カミング氏はBBCの取材に対し、「悪意のある投稿や人種差別を助長する投稿に対処しないSNS企業への圧力は日に日に高まっている。FacebookやTwitterが最も恐れなければならないことは、信頼の損失である。広告主からの信頼を損なえば、同社はこれまでに経験したことのない壊滅的な被害を受けるだろう」と述べた。

26日、Facebookの株価は約8%下落。広告ボイコットキャンペーンが同社の企業価値を75億ドル(約8,000億円)目減りさせたのである。しかし専門家たちは、同キャンペーンが世界中に拡散、大きくなる可能性は低く、同社の脅威になるとは考えていないようだ。

スポンサーリンク

Stop Hate for Profit

まず、SNS企業に対する広告ボイコットキャンペーンは今に始まったことではない。

2017年、世界の主要企業は、人種差別や同性愛嫌悪を思わせるYoutube動画に懸念を表明し、YouTubeへの広告掲載を停止した。しかし、このボイコットキャンペーンは完全に忘れ去られている。そして、YouTubeは広告ポリシーを微調整し、親会社であるGoogleと共に現在も栄華を極めている

さらに、同キャンペーン期間は短い。主要企業は7月1日から”1カ月間”広告を停止すると約束したが、以降の動向は未定である。今のままでは、3年前のYouTube事件と同じような末路(忘れ去られる)をたどるだろう。

Facebookの広告収入の大半は、数万社とも言われる”中小企業”の広告料が占めている。CNNの報告によると、大手企業100社が同社に支払った広告料は42億ドル(約4,500億円)。同社の広告収益の約6%に過ぎない。

そして、中小零細企業の大多数は、Stop Hate for Profitへの参加を表明していない。

広告代理店Digital Whiskey社の戦略責任者を務めるマット・モリソン氏はBBCの取材に対し、「中小零細企業は宣伝しないわけにはいかない。テレビ広告よりはるかに格安なSNS広告は、彼らの頼みの綱である。1日数十億人がFacebookにログインし、様々な広告を目にする。このコンテンツを逃す手はない」と述べた。

パソコン、スマートフォンは世界中に拡散し、生活の一部になった。それを利用する何十億人もの人々は、1日に何十回、何百回もSNS広告を目にする。中小零細企業の経営者たちがテレビ広告よりSNS広告を選ぶのは当然だろう。

Facebookに異議を唱えた主要企業は、ヘイトやプロパガンダが世界に拡散され、かつ、その横に自社の広告が載ることを恐れている。ヘイトやプロパガンダ自体を禁止するためには、ボイコットキャンペーン(広告料不払い)でSNS企業に圧力をかければよい。しかし、Facebookが強大な情報発信力を持っているため、中小零細企業はその魅力に屈したのである。

マーク・ザッカーバーグCEOは、「ポリシーを変更する用意がある」という意思表示を示している。26日、Facebookは悪意のあるコンテンツにタグをつける”注意喚起措置”を開始すると発表した。また、ポリシーはさらに変更、強化される可能性もある。

29日、RedditはトランプキャンペーンをBANした。理由は既に述べた通りである。トランプ大統領の選挙キャンペーンチームはヘイトを拡散している。Redditはそれに関連する投稿自体を禁じた。

Twitterもトランプキャンペーンチームが運営するアカウントを一時停止させ、ヘイト拡散を止めた。

Amazonプライムビデオは、トランプ大統領の集会を記録した2本のビデオが規則を破ったと述べ、対抗措置を講じる予定だという。

FacebookなどのSNS企業は、トランプ大統領に引っ掻き回され、好きなように利用され、そしてヘイトおよびプロパガンダを拡散するツールとして利用されてきた。

Stop Hate for Profit(ヘイトで金儲けするな)」キャンペーンは、1カ月後に終了する予定である。しかし、期間が秋、冬まで延長されるような事態になれば、ザッカーバーグCEOはトランプ大統領に引導を渡さねばならないだろう。

【関連トピック】
トランプ大統領vsツイッター社/正義の夜明け
トランプ大統領vsバイデン前副大統領/罵り合いの夜明け
ジョージ・フロイドの死/人種差別に関連する像を破壊する愚行

スポンサーリンク