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メキシコ大統領、米司法省の起訴状を独自調査、与党関係者含む

ニューヨーク州の裁判所で公表された起訴状では、メキシコの現職および元政府高官10人が、合成麻薬フェンタニルやコカインなどの麻薬を米国に密輸する活動に関与したとされる。
2026年4月30日/メキシコ、首都メキシコシティ、シェインバウム大統領(ロイター通信)

メキシコクシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は4月30日、米司法省が同国の現職・元政府関係者を麻薬犯罪で起訴した問題を受け、メキシコとして独自に調査を行う方針を明らかにした。米側の訴追は同国最大の犯罪組織であるシナロア・カルテルとの関係をめぐるもので、両国関係にも影響を及ぼす重大な問題となっている。

ニューヨーク州の裁判所で公表された起訴状では、メキシコの現職および元政府高官10人が、合成麻薬フェンタニルやコカインなどの麻薬を米国に密輸する活動に関与したとされる。中でも注目されているのが与党・国家再生運動(MORENA)に所属する西部シナロア州の知事で、麻薬カルテルから政治的支援や賄賂を受け取る見返りに活動を保護した疑いがかけられている。

これに対し同知事は疑惑を全面的に否定し、「根拠のない政治的な攻撃だ」と反発している。今回の起訴は現職の州知事を含む異例の内容であり、メキシコ国内で大きな政治的波紋を広げている。

シェインバウム氏は定例会見で、米国の主張をそのまま受け入れることはせず、メキシコ検察が独自に証拠を精査すると強調した。米国からは関係者の身柄引き渡し(引き渡し要請)も提出されているが、シェインバウム氏は「明確な証拠がなければ拘束や引き渡しには応じない」との立場を示している。

さらにシェインバウム氏は、外国政府による内政干渉を強くけん制。「証拠が不十分、あるいは政治的動機によるものであれば、いかなる場合でも受け入れない」と述べ、国家主権を守る姿勢を打ち出した。

今回の問題はメキシコと米国の関係に新たな緊張をもたらしている。米国は近年、フェンタニル流入への対策としてメキシコへの圧力を強めており、麻薬カルテルと政治の癒着を厳しく追及してきた。一方でメキシコ側はこうした動きが主権侵害につながりかねないとして警戒を強めている。

また、この問題は国内政治にも大きな影響を及ぼしている。起訴された人物の中には与党関係者が含まれ、シェインバウム政権にとっては政権基盤を揺るがしかねない事態となっている。支持基盤を維持しつつ対米関係を悪化させないという難しい舵取りを迫られている。

メキシコ政府はすでに、検察当局が証拠の有無を精査し、国内法に基づいて対応を判断する方針を示している。しかし、証拠の評価や対応次第では、米国との外交摩擦が一層深まる可能性もある。

今回の起訴は麻薬犯罪対策をめぐる国際協力の難しさと、主権を巡る対立の構図を改めて浮き彫りにした。メキシコが独自調査の結果をどのように示すのか、そして米国との関係をどう維持していくのかが今後の焦点となる。

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