◎ウラジーミル・プーチン大統領は自ら演習を監督し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や巡航ミサイルの発射手順などを確認する予定。
2月18日、ロシアはウクライナ東部の緊張が高まる中、戦略核兵器の発射を想定した演習を19日に行うと発表した。
国防省によると、ウラジーミル・プーチン大統領は自ら演習を監督し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や巡航ミサイルの発射手順などを確認する予定だという。
ペスコフ報道官は18日、「プーチン大統領は国防省の戦略室で演習を監督し、自らミサイル発射の指揮を執る」と述べた。
またペスコフ報道官は、「国防省は軍司令部の動きや人員の配置、核兵器や通常兵器の信頼性をチェックするために、この演習を以前から計画していた」と強調した。
西側諸国はウクライナ国境付近に展開された推定16万9000人~19万人のロシア兵(ロシア軍の地上部隊の約60%)に懸念を表明しているが、プーチン大統領は侵攻の可能性を否定している。
プーチン大統領は米国とNATO(北大西洋条約機構)にNATOの東方拡大とウクライナのNATO加盟を認めないことを文書で法的に保証するよう求めているものの、西側はこの要求を拒否している。
ロシアは毎年戦略核兵器の演習を実施しており、19日に予定されている演習は黒海に展開した艦隊も関与する可能性が高いと伝えられている。
ロシアは2014年に併合したクリミア半島の黒海基地に巡航ミサイルを装備した軍艦と潜水艦を配備しているが、ICBMは配備しておらず、この戦略部隊は過去の核演習に参加していない。
ロシアは毎年秋に核演習を行っているため、AP通信によると、バイデン政権の高官はロシアがウクライナ侵攻に合わせて演習を2月にずらした可能性があると懸念を表明したという。
ペスコフ報道官は、「ロシアは事前に海外の関係国に演習を行うと通知していた」と述べ、演習は西側諸国を心配させるようなものではないと強調した。「核兵器の発射演習は通常の演習の一環であり、軍当局は異なるチャンネルで他国に通知を送っています...」
プーチン大統領は18日に同盟国ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と会談し、19日の演習に招待した。
権威主義者のルカシェンコ大統領は2020年に発生した国内デモの弾圧やその他の違法行為で西側に制裁を科されている。ルカシェンコ大統領は昨年、ロシアの核兵器を領土内に配備したいと述べ、西側諸国を威嚇した。
ロシアの主力核兵器は陸上のICBM、潜水艦搭載のICBM、核搭載爆撃機の3つに分類される。
ロシアは今週、ウクライナ東部と北部に展開した部隊の一部を撤退させると発表したが、西側はこの発表を疑問視し、実際には数千の兵士を増派したと主張している。
しかし、ロシア外務省は17日、撤退には時間がかかると西側の懸念を却下し、安全保障にかかわる問題が発生すれば、必要に応じて部隊を展開すると述べ、西側を再び威嚇した。
一方、ジョー・バイデン大統領は18日、「プーチン大統領はウクライナ侵攻を決断したと確信しており、近いうちに攻撃が始まる」と警告した。
バイデン大統領はテレビ演説の中で、「私の発言は首都キエフが標的になると示唆する米国の情報に基づいている」と述べた。
2014年にウクライナから独立したテロリスト国家はウクライナ軍から攻撃を受けたと主張しており、同盟国のロシアに侵攻の大義名分を与えようとしている。
ウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」はロシアのクリミア併合に合わせて独立を宣言したが、西側諸国とウクライナは自称国家を分離主義者と見なしている。
ウクライナ周辺に展開されたロシア軍の中にはドネツクとルガンスクのテロリストも含まれている。
バイデン大統領は、「ロシア軍は数日のうちにウクライナ侵攻を決行すると信じるに足る理由がある」と述べ、「プーチン大統領は決断したと確信している」と強調した。これまでバイデン政権はプーチン大統領が侵攻を決断したかどうかは分からないと述べていた。
ドネツクとルガンスクは東部の緊張をあおっている。
ドネツクの代表、デニス・プシーリン氏は18日に放送されたビデオ演説の中で、「ウクライナ軍が砲撃を強化したため、住民の避難を開始した」と主張した。
ウクライナのクレバ外相はドネツクの主張を「ロシアのフェイクニュース」と非難している。
ドネツクとウクライナの国境付近では数十万人が生活しているものの、ウクライナのメディアによると、今のところ大規模な避難が始まった兆候は見られないという。ロシアの国営メディアは18日、ドネツクの住民を乗せたバス数台がロシアに向かったと報じた。
またロシアの国営メディアによると、プーチン大統領は国境付近に難民キャンプを設置し、ドネツクから到着した市民に緊急支援を提供するよう命じたという。
ウクライナ軍とドネツク・ルガンスクによるドンバス戦争は2015年の停戦協定ミンスクⅡで停戦したが、両軍は国境周辺で何度も衝突している。2020年に死亡したウクライナ兵は50人、2021年の1月~3月の死者は25人、同年1月~10月の間に民間人30人が死亡した。