◎銀行は法律が発動した時点で「裁判所の命令を待たずに」デモに関与した個人の銀行口座を凍結できるようになる。
2月14日、カナダのジャスティン・トルドー首相はコロナワクチンの義務化に反対する抗議デモを取り締まるために緊急事態法を発動すると発表した。
トルドー首相は記者団に対し、「法の期間と範囲は限定的で、合理的かつ妥当であり、軍隊を配備することはないだろう」と述べた。
カナダ放送協会(CBC)によると、銀行は法律が発動した時点で「裁判所の命令を待たずに」デモに関与した個人の銀行口座を凍結できるようになるという。
政府のコロナウイルス対策に抗議するデモ、通称フリーダム・コンボイは首都オタワから全国に拡大し、アンバサダー橋を含む国境検問所の封鎖に発展した。抗議者たちはカナダと米国を行き来するトラック運転手にワクチン接種が義務付けられたことに反対している。
米ミネソタ州デトロイトとオンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー橋は両国の総貿易の約25%に相当する物資が毎日行き来しており、GMやトヨタを含む地域の自動車業界に大打撃を与えた。
オンタリオ州は13日に橋周辺の抗議者を排除し、約1週間ぶりに橋の通行を再開させた。
トルドー首相は、「国民の生活と安全を守るために緊急事態法を発動する」と述べ、抗議者に撤退を呼びかけた。
またトルドー首相は「法が施行されると、警察は抗議者を投獄したり、罰金を科したり、重要なインフラを保護するためにより多くの権限を与えられる」と警告した。
一部の専門家はトルドー首相が2021年にインドのニューデリーで発生した農民デモへの支持を表明した際のコメントを引用し、「カナダは常に平和的な抗議の権利を保障する」と述べ、決定を非難した。
首都オタワや他の国境検問所の抗議デモは3週目に突入した。
フリーランド副首相は緊急事態法の説明の中で、「銀行は裁判所の命令を待たずに、デモに関与した個人の口座を凍結できる」と述べた。また副首相によると、車両保険も停止できるという。
フリーランド副首相はフリーダム・コンボイに暗号通貨やクラウドファンディングで資金を提供している組織と資金の流れを法律に基づき追跡することが重要と語った。
運転手たちはGive Send Goと呼ばれるキャンペーンのクラウドファンディングで寄付を呼びかけ、800万ドル(9.3億円)以上を調達したと伝えられている。
最初に資金を提供したGo Fund Meキャンペーンは、一部の抗議者がキャンペーンの利用規約に違反したとして資金提供を打ち切り、資金を寄付者に返金すると発表している。
1988年に成立した緊急事態法は発動に高い法的ハードルを要求している。CBCによると、法はカナダ国民の生命、健康、安全を著しく危険にさらすような緊急かつ重大な状況においてのみ施行可能で、合法的な抗議活動は対象外と思われる。
しかし、ラメッティ法務相は「抗議デモは全国規模の危機に発展し、既存の法律や州政府の対応力を超えている」と述べ、法の発動条件は満たされていると強調した。
オンタリオ州の州首相は野党保守党の党員だが、連邦政府を支持すると述べた。しかし、ケベック、マニトバ、アルバータ、サスカチュワンの州首相は必要ないと述べている。
野党は政府のコロナ対策を批判し、フリーダム・コンボイをおおむね支持していたが、国の基幹産業である自動車業界に影響が及んだことで対応を一変させた。
ケベック州の州首相はソーシャルメディアに、「非常事態法は火に油を注ぐことになりかねない」と懸念を表明した。
トルドー首相は緊急事態法を直ちに発動できるが、1週間以内に上下両院の事後承認を得る必要があり、どちらかが否決すればその時点で法は取り消される。
上階両院はサプライチェーン、経済、対米関係に影響を及ぼしているフリーダム・コンボイの即時終了を求めているが、一部の議員は緊急事態法の発動に懸念を表明している。保守党のバーゲン党首は、状況を悪化させる可能性があると指摘した。
首都オタワには400〜500台のトラックが市街地に駐車し、通行を妨害している。トロントやバンクーバーなどの主要都市でもデモは続いており、国境沿いの町クーツでは抗議者11人が逮捕された。CBCによると、クーツの警察は抗議者から銃器を押収したという。