◎バイデン政権の特筆すべき数字。
米国のジョー・バイデン大統領はこの1年、多くの挫折を経験し、妥協し、困難に見舞われた。しかし、米国の誇りと民主主義を取り戻すという野望を達成するために老骨に鞭打ち、コロナウイルスやその他の様々な問題に立ち向かうと誓っている。
米国の製薬会社は世界にコロナワクチンを展開したが、自国のワクチン接種率は伸び悩んでいる。
経済の急回復が招いたインフレは世界の人口の99%を占める中低所得者層を痛めつけている。
混沌としたアフガニスタン戦争は予定通り終結したが、米軍の大脱出劇は西側の同盟国を不安にさせ、最後の最後で発生した自爆テロは米兵13人の命を奪った。
コロナ救済法案とインフラストラクチャー法案は無事可決されたが、4兆ドル規模の社会および気候対策法案は圧縮され、完全に行き詰まった。
バイデン政権の特筆すべき数字は以下の通り。
コロナワクチン完全接種率 63.5%
ファイザー、モデルナ、J&Jワクチンを世界に展開した米国の完全接種率はようやく人口の63%を超えた。
米国よりワクチン接種率が高い主要国はアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ノルウェー、サウジアラビア、韓国、スイス、イギリスなど。
米国より累計陽性者の多い国はない。
米国より累計死亡者の多い国もない。
失業率 3.9%
失業対策はバイデン大統領の初年度の大きなハイライトのひとつであり、政策はおおむね機能した。
2021年1月の失業率は6.4%。
同年7月に議会予算局が提出した報告書は2021年末の失業率を4.6%と予想していたが、バイデン大統領は新たに640万人の雇用を創出し、予想を上回る3.9%まで改善させた。
消費者物価指数 7%
過去40年で最悪のインフレは経済を傷つけ、バイデン大統領にやけどを負わせた。
進行中のインフレはガソリン価格を押し上げたが、バイデン大統領の支持率は押し上げなかった。
オミクロン株の流行の影響でガソリン価格はひとまず落ち着いたものの、抜本的な対策が必要不可欠であり、対応を誤ると自分の首を絞めることになる。
一部のエコノミストは、「物価の上昇はバイデン政権の予算規模が大きすぎることを示している」と主張した。
FRBは今年、利上げに踏み切る予定である。
インフラ法 1兆ドル
上院の民主党と共和党の超党派は1兆ドル(約115兆円)のインフラ法案をバイデン大統領の机に送り、成立させた。
バイデン大統領が最初に提案した予算は2.3兆ドルだったが、共和党の抵抗に直面し、妥協を余儀なくされた。
またバイデン大統領は1.8兆ドルの予算法案を提案したが、これは上院ではじき返され、廃案になった。
下院民主党は3.5兆ドルの通称「ヒューマンインフラ法案」を可決し上院に送ったものの、予算規模は半分に圧縮され、それでもバイデン大統領の机に届く可能性は低い。
上院共和党の50人と一部の中道右派の民主党員はバイデン大統領の支出計画に強く反対している。
自爆テロ 13人
アフガニスタン戦争は昨年8月末に予定通り終結したが、米国の混沌とした脱出劇とカブールの国際空港近くで発生した自爆テロは西側の懸念を煽り、米国の威信を失墜させた。
自爆テロの犠牲者は少なくとも169人、数百人が負傷し、周辺で対応にあたっていた米兵13人が巻き込まれ死亡した。
さらに、現地の米国民数十人が取り残され、民主的な政府を求めるアフガニスタンの市民数万人が空港で置いてきぼりを食らった。
米国史上最長の戦争で死亡した米兵は約2,500人。
国境検問所 178万人
バイデン大統領の就任後、中南米の移民希望者がメキシコの国境付近に押し寄せ、その数は日を追うごとに増加した。
2021年1月~10月の間に国境警備隊が取り締まった移民希望者は178万人に達し、ドナルド・トランプ前大統領の退任までの10カ月の4倍に増加した。
自然災害 20
2021年1月以来、米国では20の異常気象とそれに伴う災害が発生し、数十億ドル規模の損害をもたらし、688人が死亡した。
災害の内訳は嵐が11回、ハリケーンが4回、洪水が2回、山火事、干ばつ、冬の嵐がそれぞれ1回ずつ。
24州
バイデン大統領は就任以来、24州を訪問し、演説などを行った。
最も多く訪れたのはペンシルベニア州の7回、次点がミシガン州の5回。2つは2020年の大統領選挙に影響を与えた重要な州だった。
ファーストレディは35州を訪問した。
連邦判事 41人
バイデン大統領は就任1年目に41人の連邦判事を任命した。
これは歴代大統領の中で最も多く、ホワイトハウスによると、その80%は女性で、53%は有色人種だった。
103日
上院の承認が必要なバイデン大統領の議案に対する審議時間は平均103日に達し、過去の6政権より長くなった。
ロナルド・レーガン大統領の1年目の審議時間は約40日。
記者会見 9回
バイデン大統領は公式記者会見を9回開催し、メディアインタビューには22回応じた。
記者会見の回数は過去の5人の前任者より少ない。トランプ前大統領は保守系メディアのインタビューが大好きだった。
「冗談ではありません(not a joke)」32回
バイデン大統領は声明の中で何度も「冗談ではない」という言葉を使った。
市民権の侵害、投票権の侵害、労働組合の重要性、自宅のあるデラウェア州の大気汚染、気候変動、国家安全保障上のリスク、共和党の有権者、バイデン政権の経済対策に関する世論調査の残念な結果、チームトランプの活動活発化、憂慮すべき2022年中間選挙、すべて冗談ではない。