◎バルト海を通過するノルドストリーム2はドイツへのガス輸送を倍増させるが、旧パイプラインに依存しているウクライナは大きな打撃を受ける可能性がある。
2021年11月16日/ドイツ、ルプミン工業団地に設置されたノルドストリーム2ガスパイプラインの看板(Stefan Sauer/ドイツ通信社/AP通信)

11月16日、ドイツの規制当局はロシアの天然ガスを欧州に届ける新しいパイプライン「ノルドストリーム2」の運用開始に向けた承認手続きを一時停止したと明らかにした。

ノルドストリーム2の建設工事は今年初めに完了したが、まだ稼働していない。ウクライナと米国はこのパイプラインに強く反対しているが、欧州で進行中の燃料危機を改善するという意見も多く寄せられている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先月、ノルドストリーム2を稼働すれば、EUへの天然ガス供給を増やすことができると述べた。EUのガス不足に伴うエネルギー価格の高騰は、企業と個人の活動に深刻な影響を与えている。

ドイツ連邦ネットワーク庁は16日、ノルドストリーム2の操業に向けた承認手続きを一時停止すると発表したうえで、操業を開始するためにはドイツの法律に準拠する必要があると強調した。手続きを再開する時期は明らかにされていない。

バルト海を通過するノルドストリーム2はドイツへのガス輸送を倍増させるが、旧パイプラインに依存しているウクライナは大きな打撃を受ける可能性がある。

ウクライナとロシアの半国営企業ガスプロムの契約は2024年に切れる予定。ロシアは旧ルートの輸送量を減らし、ノルドストリーム2を欧州のメインパイプラインにする予定だが、これを実行するとウクライナは数十億ドル規模の輸送費損失を被ることになる。ロシアとウクライナは2014年のクリミア併合以来、激しく対立している。

ドイツの企業はノルドストリーム2に数十億ユーロを投じ、ゲアハルト・シュレーダー元首相は建設プロジェクトで大きな役割を果たした。建設費は100億ユーロ(約1.3兆円)と推定されている。

規制当局の声明発表後、EUとイギリスの天然ガス価格は約17%上昇した。

規制当局は声明の中で、ノルドストリーム2の運用責任者(企業)を認定するためには、ドイツの法律に準拠する管理体制を構築する必要があると述べた。

承認手続きの再開時期は明らかにされていないが、ドイツ通信社は「数カ月は遅れる」と報じた。操業を開始するためには、ドイツと欧州委員会の承認が必要。

一方、ドイツ通信社によると、ノルドストリーム2を管理する親会社の「ノルドストリーム2 AG社」は、承認手続きの詳細と、今回の決定が操業の開始時期に影響を与えるかどうかについてはコメントを控えたという。

ノルウェーに本拠を置くエネルギー研究企業リスタッド・エナジーのガスおよび電力市場責任者であるカルロス・トーレス・ディアス氏は、「ノルドストリーム2は2022年半ばまで稼働できない可能性がある」と報告した。

ディアス氏はレポートの中で、「文書の再提出にかかる時間、ドイツ当局の審査、欧州委員会の審査等を考慮すると、操業開始はかなり先になるだろう」と述べた。

ウクライナの国営ガス会社ナフトガス・ウクライナはドイツ当局の決定を歓迎した。ポーランドのガス会社PGNiGも決定を擁護したうえで、「EUは地域の天然ガス供給の安全を確保するために連帯して行動しなければならない」と呼びかけた。

2021年8月20日/ロシア、首都モスクワのクレムリン、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に花束を手渡すウラジーミル・プーチン大統領(Sputnik/クレムリン/Pool/AP通信)
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