◎国軍と北部ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は1年前に本格化し、これまでに民間人数千人が死亡した。
11月4日、エチオピア政府はティグライ紛争で犠牲になった国軍兵士を称える追悼式典を開催し、テロリストを「巣穴から離れたネズミ」と呼び、埋葬する(勝利する)と誓った。
国軍と北部ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は1年前に本格化し、これまでに民間人数千人が死亡した。
国軍は昨年11月末にティグライ地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFはオロモ解放戦線などの反政府勢力と同盟を結んでティグライ国防軍(TDF)を結成し、6月の奇襲攻撃で地域の支配権を取り戻した。
TDFはティグライ地域に隣接するアムハラ州とアファール州の一部を支配下に置き、さらに首都アディスアベバから約400km離れた2つの都市を占領したと伝えられている。
政府は2日、TDFが首都に迫っていることを受け、6か月間の国家非常事態を宣言した。これにより夜間の外出、地域間の移動、物資の輸送は原則禁止され、さらに、政府は報道機関の免許を一時停止し、反政府勢力とつながりのある個人を法的手続きなしで拘留できるようにした。
一部地域の自治体は解散し、軍の指令所が設置される予定と伝えられている。集会と抗議デモも禁止された。
ティグライ地域の住民約600万人を巻き込んだ紛争は首都アディスアベバを飲み込む恐れがある。米国務省のネッド・プライス報道官は4日の記者会見で、エチオピア在住の米国市民に出国を強く促していると述べた。
隣国エリトリアとの歴史的な和平を達成し、2019年にノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド首相はTPLFとの対話を求めていたが、交渉は失敗に終わった。主要メディアによると、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は3日にアビィ首相と会談し、首都決戦の回避に向けた取り組みを進めるよう要求したという。
国連安全保障理事会はケニア、アイルランド、ニジェール、チュニジア、セントビンセント・グレナディーンの要請を受け、5日午後に公開および非公開協議を開催する予定。
AP通信によると、安保理は「軍事衝突の即時停止」「双方の関係者によるヘイトスピーチの停止」「ティグライ地域で進行中の飢餓危機の終結に向けた地域への無制限のアクセス」を求める声明を検討しているという。
ティグライ地域の飢餓危機は過去10年で世界最悪と見なされており、国連は今年公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。
しかし、アビィ首相は先日、フェイスブックの投稿で首都の住民に武器を取り、TDFの戦闘員を迎え打ち、「埋める」よう促した。フェイスブックはこの投稿を「暴力の扇動」にあたると認め、3日に削除した。
アビィ首相は4日の声明でフェイスブック、メディア、人道団体を非難し、「これらの組織はテロリストと協力して偽りの情報を拡散している」と述べた。
ケニア政府はエチオピアの難民が押し寄せてくる可能性に懸念を表明し、国境警備を強化した。ウガンダ政府は東アフリカの指導者に緊急会合を呼びかけ、EUは「広範な武力紛争」を避ける必要があると警告した。
一方、TDFのスポークスマンであるゲタチュー・レダ氏は4日、「戦闘員たちはオロモ解放戦線らと共に、首都近くのケミッセ市を占領した」とツイートした。レダ氏によると、首都占領に向けた作戦は今後数日から数週間続く見込みだという。
AFP通信などによると、エチオピア政府の治安当局はTDFがケミッセ市を占領したことを認め、TDFは首都の東と南の地域を支配下に置きつつあるという。
TPLFはティグライ地域周辺の封鎖を解除し、国連や人道団体の支援を受け入れるよう政府に圧力をかけている。しかし、ティグライの周辺州が占領下に置かれた結果、幹線道路は閉鎖され、ティグライへのアクセスはより困難になったと伝えられている。
米国は首都決戦の回避に向けた取り組みを進めている。AP通信よると、ジェフリー・フェルトマン特別特使は4日遅くから首都アディアベバでエチオピア政府高官、TPLF、オロモ解放戦線を含む反政府組織の関係者と政治的解決に向けた協議を行っているという。