◎ナジブ・ミカティ首相率いる閣僚24人の最も差し迫った使命は、約100万人のシリア難民を含む国民600万人の生活を再建することである。
9月13日、レバノンの新政権は最初の閣議を開き、過去150年の中で世界最悪のひとつと見なされている経済危機から抜け出すためには国際通貨機関(IMF)の援助が必要不可欠と呼びかけた。
ナジブ・ミカティ首相率いる閣僚24人の最も差し迫った使命は、約100万人のシリア難民を含む国民600万人の生活を再建することである。2019年に発生した経済危機はわずか数カ月で国民の半数以上を貧困に追いやり、紙幣は紙屑になり、ハイパーインフレと失業を前例のないレベルに押し上げた。
国連や他の調査機関によると、レバノンの人口の推定75%が現在貧困ライン以下での生活を余儀なくされているという。
ミシェル・アウン大統領は閣議の中で、「新政権は昨年中断されたIMFとの協議と援助の再開に向けた取り組みを加速させなければならない」と述べた。また、腐敗と戦い、昨年8月に発生したベイルート港の爆発事故の調査を進めるよう要求した。
ベイルート港の爆発事故では少なくとも214人が死亡、6,000人以上が負傷し、数十万人がホームレスになった。
旧政権はベイルート港の事故の責任を取って辞任したが、レバノンを牛耳るイスラム過激派組織ヒズボラは暫定政権の発足を却下し、旧政権のハッサン・ディアブ前首相に国をまとめるよう命じ、レバノンの政治は機能不全に陥った。
ジョージ・コルダヒ情報相は閣議後の記者会見で、「ミカティ首相は市民の生活に影響を与える問題への対処を最優先事項に掲げており、連日閣議を開催する予定」と語った。
コルダヒ情報相によると、ミカティ首相は「話し合いや約束」ではなく、速やかに行動するよう閣僚に命じたという。
新政権は燃料補助金の停止が招いた国民の怒りと緊張に速やかに対処する必要がある。レバノンの中央銀行は先月、政府の怠慢で外貨準備が大幅に減少したため、燃料製品に対する補助金を終了すると発表した。結果、ガソリンスタンドのタンクは枯渇し、ガソリン価格は急騰し、多くの混乱を引き起こした。
レバノンの外貨準備は危険なほど少なくなっており、中央銀行は約60億ドル(約6,600億円)の補助金プログラムを維持することはできないと述べた。
新政権は発足前から多くの批判に直面していた。24人の閣僚の大半はその分野の専門家で構成されているが、任命には経済崩壊を招いたヒズボラが深く関わっている。
一方、財務省は13日の声明で、「レバノンは世界の流動性を高めるIMFの取り組みの一環として、特別引出権(SDR)プログラムから10億ドル以上の援助を受ける」と明らかにした。
IMFは先月、コロナウイルスの感染拡大が引き起こした世界規模の景気後退と戦う脆弱な国々を支援するために、6,500億ドル(約71兆円)の新たな援助プログラムを承認した。この予算のうち約2,750億ドル(約30兆円)は、より貧しい国々に割り当てられる。
財務省によると、レバノンは9月16日までに11億3,500万ドルのSDRを受け取るという。
SDRはIMFの仲介を受けることで、他の加盟国の保有する自由利用可能通貨(米ドル、ユーロ、円、ポンド、人民元)をいつでも保有分引き出すことができる。中央銀行の準備金は枯渇しているため、SDRは重要な後押しになると期待されている。