◎ビットコインの価格は株や債券のように大きく変動する。
9月7日、中米エルサルバドルは暗号通貨のビットコインを法定通貨に採用した世界初の国になったが、実装開始から数時間も経たぬうちにトラブルに見舞われた。
進歩的な新アイデア党を率いるナジブ・ブケレ大統領は声明で、「取引に利用するデジタルウォレットが利用できなくなった」とツイートした。
現地メディアによると、ビットコインの取引時に使用する専用のデジタルウェレットアプリ「Chivo」にアクセスが殺到し、つながりにくい状態になったという。
ブケレ大統領はサーバーの過負荷を比較的解決しやすい問題と述べたが、サーバーの増強を含む再発防止対策については明言しなかった。
一方、ビットコインの価格は7日の初めに1ビットコイン52,000ドル以上から42,000ドルまで急落し、その後損失の約半分を回復した。
政府は国内にChivo専用のATM200台と案内所を50カ所設置すると約束しており、7日から運用が始まったと伝えられている。
AP通信によると、首都サンサルバドルのATMには利用客をサポートする専門のスタッフが配置されていたという。
ATMの前でスマートフォンを使っていた男性はAP通信の取材に対し、「アプリ(Chivo)をダウンロードするかどうかは分からない」と述べた。「私はビットコインではなく米ドルを使います」
別の男性はビットコインに興味はあるが、たぶんダウンロードしないと述べた。「私は米ドルでいいと思いますが、ビットコインへの投資に興味がないわけではありません」
ビットコインの価格は株や債券のように大きく変動する。
地元メディアの取材に応じたデニス・リベラ氏は、「ビットコインの問題点を理解している」と述べ、アプリ口座の新規開設でもらえる30ドルを引き落としに来たと語った。
理髪店を営むホセ・ルイス・エルナンデス氏は、ビットコイン決済のやり方を理解しなければならないと頭を抱えた。
エルサルバドルの企業や個人事業主は9月7日に施行したビットコイン法に基づき、もうひとつの法定通貨である米ドルと同じようにビットコインでの支払いを受け入れることが義務化された。
AP通信によると、少なくとも3つの世界的なファーストフード店がビットコインでの支払いを開始していたという。
一方、最近行われたメディア3社の世論調査によると、回答者の大多数がビットコインの法定通貨採用に反対したという。
議会は6月にビットコイン法案を可決し、中央アメリカ経済統合銀行(CAVEI)が実装に向けた技術支援を提供した。なお、世界銀行も技術支援の要請を受けていたが、透明性の欠如などを理由に要請を却下した。
専門家もビットコインの透明性の欠如が違法な取引を促し、さらに、ビットコインの問題点をよく理解していない国民は貯蓄を失う可能性があると警告した。
野党議員とその支持者たちはサンサルバドルでビットコイン法の廃止を要求する集会を開催した。
エルサルバドルの経済は国外からの送金(GSPの約20%)に大きく依存している。ブケレ首相は、「ビットコインは主にアメリカで稼いだお金の送金にかかる手間と費用を抑え、同時に投資も促す」と主張したが、価格の変動に伴う損失は個人で負わなければならない。
政府の記録によると、国外で生活する200万人以上のエルサルバドル人が毎年自国に多くの現金を送っており、総額は年間40億ドル(4,500億円)以上にのぼるという。