◎首都カブールの空港に集まったアフガニスタンの市民が米空軍のC-17輸送機と併走する映像は世界に衝撃を与え、多くの米共和党員が混沌とした逃走劇を非難した。
8月16日、メリーランド州のキャンプ・デービッドからホワイトハウスに戻ったジョー・バイデン大統領はタリバンのアフガニスタン占領は予想外だったと認めたうえで、進行中のドタバタ逃走劇を擁護した。
首都カブールの空港に集まったアフガニスタンの市民が米空軍のC-17輸送機と併走する映像は世界に衝撃を与え、多くの米共和党員が混沌とした逃走劇を非難した。
ロイター通信などによると、輸送機と併走した民間人少なくとも7人が死亡したという。AP通信は機体から数名が落下し、死亡したと報じた。
ジョー・バイデン大統領はアフガニスタンに閉じ込められた人々の苦悩を「苦痛」と呼び、タリバンは予想よりもはるかに早く国を乗っ取ったと認めた。
バイデン大統領は記者団に対し、「アメリカ史上最長の戦争を終わらせるという公約を変えることはなく、自分の決定を真っ向から支持しています」と語った。「これ以上アメリカ人の生活を犠牲にすることはできません。米軍を撤退させる最適な時期などありません...」
アシュラフ・ガニー大統領は15日に大統領宮殿を飛び出し、隣国タジキスタンかウズベキスタンに逃亡したと伝えられている。ガニー大統領の所在地は明らかにされていない。
タリバンはアメリカのアフガン完全撤退発表から数カ月で主要都市を占領し、特にここ1週間の電撃戦の勢いはすさまじく、多くのオブザーバーに衝撃を与えた。
バイデン大統領はアフガン軍の劇的な敗走について、「先週の進展は米軍の関与を終わらせることが正しい決断であったことを強調しています」と述べた。「米軍は戦うことを拒否したアフガン軍のために死ぬべきではありません...」
バイデン大統領は4月の声明で、9.11からちょうど20年にあたる今年の9月11日までにアフガニスタンから完全撤退すると発表し、その後撤退期限を8月末に前倒しした。しかし、アフガン軍は戦うことなく降伏し、アメリカとNATOが提供した数十億ドル相当の武器と装備をタリバンにプレゼントした。
米共和党を含むバイデン大統領の批評家はタリバンの火力が増強されたことに懸念を表明し、「アメリカ史上最大の失態」と非難した。
共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は、「アフガニスタンで発生した混乱は災害であり、バイデン政権の撤退はアメリカの評判に悪影響を与えるだろう」とツイートした。
2001年10月にアフガン侵攻を決断したジョージ.Wブッシュ元大統領は、「アフガニスタンで進行中の出来事は悲劇である」と述べた。「多くのアフガニスタン人がリスクにさらされています。アメリカはレッドラインを越えてでも人道的危機と難民問題に対処しなければなりません」
バイデン大統領は演説の中で、アメリカの目的はアフガニスタンの再建ではなかったと主張し、オバマ政権時代のアフガン駐留軍増強(2009年)に反対したと語った。
また、米軍の完全撤退はドナルド・トランプ前大統領とタリバンが和平合意に達した時点で決まっており、現政権は合意を継承しただけだと主張した。「私はアフガニスタンにもう少しとどまればより良い結果になるとアメリカ人を誤解させるつもりはありません...」
ABCニュースとイプソスが7月に行った最新の世論調査によると、回答者の大多数がアフガン撤退を強く支持したという。
しかし、バイデン政権のドタバタ逃走劇は批評家から激しく非難され、世界に衝撃を与えた。
首都カブールの上空を旋回するヘリコプターの画像は1973年のベトナム撤退を彷彿とさせ、一部の共和党員はそれを「恥辱」と呼んだ。
ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官は16日に放送されたNBCニュースのインタビューの中で、「アフガン軍はタリバンから国民を守るという意志を欠いていたため、崩壊した」と述べた。
アフガニスタン戦争の基本情報
・1996年~2001年、タリバンは国内の全ての女性にブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制し、女性の教育を10歳未満に限定し、即決処刑を含む残忍な刑罰を推進した。
・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。
・アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。
・2020年2月、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの歴史的な和平合意に達した。
・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。
・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。