◎ラリベラにある岩窟教会群はエチオピア正教会の聖地のひとつであり、12世紀から13世紀にかけて建造されたと考えられている。
エチオピアの現地メディアによると、北部ティグライ地域を支配する反政府勢力のティグライ国防軍(TDF)が、隣接するアムハラ州にあるユネスコ世界遺産の町ラリベラを占領したという。
ラリベラにある岩窟教会群はエチオピア正教会の聖地のひとつであり、12世紀から13世紀にかけて建造されたと考えられている。ユネスコは1978年にこの洞窟群を世界遺産に指定した。
地方当局者はロイター通信の取材に対し、「ラリベラはTDFに占領された」と述べた。
ティグライ地域を支配していたティグレ人民解放戦線(TPLF)と国軍の紛争は昨年11月に勃発し、数千人が死亡した。紛争はティグライ地域だけでなく隣のアムハラ州やアファール州に広がり、国際社会は戦闘に関与した全ての組織(国軍、TPLF、エリトリア軍)を厳しく非難した。
エチオピア政府は11月末に勝利を宣言したが、TPLFは他の反政府勢力と協力してTDFを結成し、6月末にティグライ地域の州都メケレを再び支配下に置いたと伝えられている。
ラリベラのマンデフロ・タデッセ副市長は英BBCニュースの取材に対し、町はティグライの反政府勢力に支配されたと述べた。「銃撃戦はありませんでした。町は彼らの支配下に置かれています。私たちは世界遺産の岩窟教会群に影響が出ないか心配してます」
タデッセ副市長はTDFに、「エチオピアの宝を保護すると保証しなければならない」と訴えた。
エチオピア、アムハラ州ラリベラ
米主要メディアによると、国務省はラリベラの占領を把握しており、ティグライの反政府勢力に世界遺産を尊重するよう呼びかけたという。
TDFの当局者は先週、ロイター通信のインタビューの中で、「私たちはティグライ地域を支配しており、政府は進行中の危機を政治的に解決したいのであれば、私たちの意思を受け入れなければならない」と主張した。
しかし、政府はティグライ地域がTDFの支配下に置かれたことを否定し、交渉の可能性を除外した。
TPLFはティグライ議会の元与党だったが、現在テロ組織に指定されているため、政治には参加はできない。
国連とアメリカは今週、TDFがアムハラ州とアファール州に侵攻しているという国際的な批判を受け、全ての当事者に戦闘を停止するよう呼びかけた。
エチオピア政府によると、アムハラ州とアファール州の住民30万人以上が戦闘の影響で避難民になったという。
一方、国連児童基金(ユニセフ)は先日、ティグライ地域で生活する子供10万人以上が深刻な栄養失調に直面する可能性があると警告した。報告によると、国連を含む人道機関は先日までにトラック175台分の支援物資を北部地域に搬入したという。
しかし、国連の世界食糧計画(WFP)は、「ティグライ地域やその他の北部地域で飢えている数百万人を助けるためには、毎日100台以上のトラックで物資を運び込まなければならない」と警告した。
国連は先月初め、ティグライの住民推定180万人が深刻な食糧不足に直面し、40万人以上が餓死しかけていると報告した。