◎地元メディアによると、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ氏の支持する強硬派が有利だという。
2021年6月18日/イラン、首都テヘランの投票所(AP通信/Ebrahim Noroozi)

6月18日、イランのハッサン・ロウハニ大統領の後任を決める大統領選挙が始まった。地元メディアによると、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ氏の支持する強硬派が有利だという。

州の世論調査とアナリストは、強硬派の司法長官であるエブラヒーム・ライシを含む4人を最有力候補と位置付けた。元中央銀行総裁で穏健派のアブドルナッサー・ヘマティ氏も一定の支持を集めていると伝えられているが、アナリストは厳しい戦いになると予想した。

ライシ氏は1988年の政治犯大量虐殺および、国際的に批判を浴びている現在のイランの司法長官としてアメリカに認識されている。専門家は、「ライシ氏が当選すれば、ボロボロの包括的共同行動計画(JCPOA/イラン核合意)を回復しようとする取り組みは強硬派に支配されるだろう」と指摘した。

イラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは濃縮度を60%まで引き上げており、貯蔵量は先日6.5kgに達した。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

イラン、イスラエル、そしてアメリカの関係は「核科学者モーセン・ファクリザデ氏の暗殺」「ナタンツ核施設へのテロ攻撃」、そしてイラン核合意をめぐる一連の混乱と厳しい経済制裁の影響で著しく悪化した。

地元メディアによると、ハメネイ最高指導者の支配下に置かれている選挙委員会は改革派やロウハニ大統領と同盟を結んだ候補者を含む数百人の立候補を禁止したため、国民の関心は極めて低いという。ハメネイ最高指導者は首都テヘランで選挙に参加するよう国民に呼びかけた。

「イランとイスラムの支配システムは選挙を通じて国際舞台でより大きな地位を獲得しますが、最初に利益を得るのは国民の皆さんです。選んでください。大統領を選ぶのはあなたです」

ハメネイ最高指導者は立法、行政、司法、軍とメディアを直接的または間接的に支配し、すべての問題の最終決定権を持ち、防衛と核計画を管理している。

2021年2月7日/イラン、首都テヘラン、アヤトラ・アリ・ハメネイ最高指導者(Getty Images/AFP通信)

人口8,000万人以上のイランには5,900万人以上の有権者がいる。しかし、イラン学生世論調査機関は、今回の大統領選挙の投票率は42%前後になると推定しており、1979年のイラン革命以来最低を更新する可能性が極めて高いという。

専門家は投票率が低くなるほど強硬派が有利になると予想しており、ハメネイ最高指導者がより厳しくイランを統治する可能性があると警告している。

8年間の在任期間中にイスラム共和制のシステムを内部から変えようとした改革派のモハンマド・ハタミ前大統領は、「受け入れられない」と述べた。「立候補を妨げ、投票率はとてつもない低さです。国民は諦めています...」

しかし、ハメネイ最高指導者は16日の演説で、投票率を下げようとしている「外国の陰謀」について警告し、2020年にアメリカのドローン攻撃で暗殺された革命防衛隊のカセム・ソレイマニ将軍をイメージしたビラを配布した。「イランはシリア内戦の影響にさらされ、重要な将軍や科学者を失いました...」

一部の専門家は、「ハメネイ最高指導者は強硬派のライシ司法長官以外に興味がない」と指摘している。穏健派のロウハニ大統領は、2018年のアメリカのイラン核合意離脱と経済制裁強化で非難の嵐に直面し、ハメネイ最高指導者の信頼を完全に失ったと伝えられている。

リスクコンサルタント会社のベリスク・メープルクロフトのアナリスト、トルビョルン・ソルトヴェット氏は今回の大統領選挙について、「イスラム共和制の歴史の中で最も競争力の低い選挙になる」と述べた。「2009年のような不正を行う必要はほとんどないでしょう...」

2009年の大統領選挙で再選を決めた当時のマフムード・アフマディーネジャード大統領は、激しい反不正抗議に直面した。

82歳のハメネイ最高指導者の息子であるモイタバ氏は、革命防衛隊と密接な関係を構築していると伝えられている。ただし、イランの最高指導者は初代最高指導者のルーホッラー・ホメイニー氏の思想に基づくイスラム共和制の理念に基づき選出されるため、ハメネイ最高指導者の息子が第3代に就任するかどうかは分からない。

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