◎朝鮮中央通信社は、「韓国のミサイル開発を許可したアメリカの決定は北朝鮮に対する敵対政策のひとつであり、韓国に危機をもたらす可能性がある」と警告した。
2019年6月/北朝鮮、大自然を颯爽と駆け抜ける金正恩(KCNA/KNS/AFP通信/ゲッティイメージズ)

5月31日、北朝鮮の国営メディアは先月開催された米韓首脳会談に対する談話を発表した。

朝鮮中央通信社は、「韓国のミサイル開発を許可したアメリカの決定は北朝鮮に対する敵対政策のひとつであり、韓国に危機をもたらす可能性がある」と警告した。北朝鮮が5月21日の首脳会談に対するコメントを発表したのはこれが初めて。

アメリカは首脳会談の中で、韓国のミサイル開発に関する制限を解除し、対北朝鮮政策の強化と完全なる非核化に向けた協議を加速することで合意した。北朝鮮の金正恩は今年初めに開催された朝鮮労働党大会の中で核開発を強化すると誓約し、アメリカの経済制裁を含む敵対政策が続く限り、交渉に戻ることはないと述べていた。

ただし、今回のコメントは政府機関ではなく評論家が出したものであり、金正恩はジョー・バイデン大統領との交渉の余地を残したいと考えている可能性があることを示唆した。

朝鮮中央通信社によると、国際問題評論家のキム・ミョンチョル氏は、「(韓国のミサイル開発の)制限の終了は、北朝鮮に対するアメリカの敵対的政策と恥ずべき二重取引を思い起こさせるものだ」と述べた。「アメリカは対話を求めていると主張しながら北朝鮮を攻撃しようとしています」

「しかし、アメリカは間違っています。朝鮮半島とその周辺で不均衡を作りだして北朝鮮に圧力をかけることは致命的な間違いであり、現状戦争状態にある北と南の不安定な情勢をさらに悪化させる可能性があります」

2021年5月21日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、ジョー・バイデン大統領と韓国の文在寅大統領(AP通信/アレックス・ブランドン)

アメリカはインド・太平洋地域の軍拡競争を考慮し、韓国に対し射程800km以上のミサイルを開発することを禁じていた。射程800km未満のミサイルでも北朝鮮全土を攻撃できるが、日本や中国などの主要都市には届かない。

韓国政府の一部のオブザーバーは制限の終了を軍事主権の回復として歓迎したが、その他の大多数は、「アメリカの狙いは対中国戦略における同盟国の軍事能力の強化」と疑っている。

国際問題評論家のキム・ミョンチョル氏は、「アメリカはインド・太平洋の軍拡競争を引き起こし、北朝鮮の開発を妨害し、北朝鮮の近隣諸国に武装するよう促した」と非難した。

一方、韓国政府のイ・ジョンジュ報道官は1日の声明で「北朝鮮の反応を注意深く見守っている」と述べたが、コメントは公式ではなくあくまで個人の見解であり、それ以上のコメントは差し控えると述べた。

バイデン大統領と文在寅大統領は首脳会談の中で、「新たな政策は北朝鮮との交渉の再開に向けた実践的なアプローチ」と述べたが、金正恩は経済制裁を含む敵対政策が解除されない限り交渉には応じないと示唆している。

ホワイトハウスは以前の声明で、「バイデン政権はトランプ政権の直接交渉とオバマ政権の戦略的忍耐の中間を採用する」と述べた。一部の専門家は、バイデン大統領は北朝鮮が具体的な非核化に向けた措置を講じない限り、経済制裁を緩和する可能性は低いと考えている。

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