▽ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は17日、中米ハイチの首都ポルトープランスとその周辺でギャング間抗争が激化し、無政府状態に陥っていると警告した。
HRWは声援で、「ハイチの治安は悪化の一途をたどっている」と指摘。「昨年末からギャングによる暴力が激化し、政府はポルトープランスの10%しか統治できておらず、いつ陥落してもおかしくない」と述べた。
またHRWは「無政府状態になった結果、超法規的殺人、拷問、レイプ、誘拐などの犯罪が横行し、多くの国民が地獄の中で生活している」とした。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県では地元のギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は先月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら支配地域の拡大を目指しているとされる。
ヴィヴ・アンサムは最近、ポルトープランスから数十キロ離れた中部の2つの町を占領した。地元メディアによると、地元警察はギャングの勢いに圧倒され、町を放棄したという。
ポルトープランスでは治安を回復することができない暫定大統領評議会に対する抗議デモも発生している。同評議会は先週、非常事態宣言を1カ月延長した。
HRWは暫定大統領評議会について、「国家警察に効果的な装備がなく、ギャングに対抗できる装甲車などがない中で非常事態を宣言しても何の意味もないし、全国民が何年も前から非常事態であることを理解している」と批判した。
またHRWは「暫定大統領評議会は右往左往し、効果的な対応を取れず、警察もまるで消防士のように火事が起きた現場に急行し、その場しのぎの対応しかできていない」と嘆いた。
国連によると、25年1月1日から3月27日の間にハイチ全土で確認できているだけで1518人が死亡、572人が負傷したという。この3年間で100万人以上が住居を失ったと推定されている。