救済措置終了
8月25日、アメリカン航空はまもなくCARES法に基づく連邦救済措置の期限終了を迎えるにあたり、従業員約19,000人との契約を今秋に終了すると発表した。
アメリカの各航空会社は、「給与計算サポートプログラム(PSP)」を通じて援助を受けるために、10月1日まで従業員のレイオフを禁止されている。
その期限が迫っていることと、今年度の空輸実績が昨年度から約70%減少しているため、人員削減の流れを止めることは難しそうである。
航空業界の専門家によると、搭乗率がパンデミック前のレベルに戻るのは、早くても2024年頃だろうと予測している。
アメリカン航空のダぐ・パーカーCEOとロバート・イソムCOOは従業員への通知文書の中で、「今日、皆さんに送ったメッセージは、私たちが最も共有したくなかったものだ」と述べた。
同社は1,600人のパイロットと8,100人の客室乗務員を含む、約17,500人の米国人従業員との契約を秋に打ち切ると発表した。
匿名での取材を希望した同社の客室乗務員はABCの取材に対し、「私は機内ですすり泣いている」と心境を述べた。
また、別の男性従業員は、10月2日が最後の出勤日になると通知を受け、打ちのめされているという。
男性従業員はABCの取材に対し、「ターミナル内で働く全従業員が動揺し、自分の将来に絶望している」と語った。
フライトが大幅に減ったことで、従業員たちは休暇を取得する(せざるを得ない)機会が増えた。結果、多くの者がUberやInstacartなどで働き収入を得ている。
同社のフライトサービス担当執行役員を務めるジルサー・デック氏は、影響を受ける従業員に充てたメッセージの中で、「今回の措置はあくまで一時的なものである。ただし、この状態がいつまで続くかを予測する方法はない」と述べている。
一方、ライバルのデルタ航空は、今週に約2,000人のパイロットと雇用契約を結ぶと発表した。これは、自主退職に同意した旧パイロット1,500人を上回る数である。
業界最大手のひとつ、ユナイテッド航空も人員削減を予定している。正式な人数は明らかになっていないが、約36,000人(米国従業員の約45%)が今秋解雇の危機に直面する可能性がある。
サウスウェスト航空およびジェットブルー航空は、レイオフ回避を望んでいるという。
サウスウェスト航空の幹部は、小さな航空会社ほどコロナウイルスのダメージを強く受けており、さらなる救済が必要と警告した。
現在、給与計算サポートプログラム(PSP)の延長を巡り、航空会社幹部と関係議員との調整が続いている。
アメリカン航空のパーカーCEOとイソムCOOは記者団に対し、「パンデミックは収束の兆しを見せず、まもなくPSPも切れる。今秋の人員削減を防ぐためには、PSPの拡張が必要不可欠である。私たちは労働組合の力を借り、業界の支援を得つつ、莫大な超党派の支援を生み出してきた」と語った。
16人の共和党上院議員と200人を超える同下院議員グループがPSPの延長支持を表明したが、合意には達していない。
アメリカン航空、人員削減
ヴァージン・アトランティック航空
8月25日、ヴァージン・アトランティック航空は、債権者からの12億ポンド(約1,680億円)の救済計画を受けると発表した。
これにより、株主、銀行、航空機の所有者、および供給業者から資金を調達する。
同社はこの合意により、「バランスシートを再構築」し、搭乗客により快適な空の旅を提供できる、と述べた。
債権者からの救済契約が実行されなかった場合、同社の資金は9月までに枯渇すると言われていた。
なお、この救済契約を受けるためには、ロンドン高等法院の承認が必要である。
12億ポンドの救済契約には約4億ポンドの新規キャッシュが含まれ、その半分が主要株主であるリチャード・ブランソン郷のヴァージン・グループから提供される。
同社の株式の49%を所有するアメリカのデルタ航空は、「この計画によりヴァージン・アトランティック航空は未来を確保できると確信している」と楽観的なコメントを発表した。
アメリカの航空各社と同じく、イギリスおよび欧州のそれもパンデミックによって深刻なダメージを受けた。
同社は従業員3,500人の削減を予定している。
6月、国際航空運送協会(IATA)は、コロナウイルスの大流行による世界の航空会社の損失は840億ドル(8.9兆円)を超えると警告した。
ブリティッシュ・エアウェイズを所有するロバート・ボイル氏はBBCの取材に対し、「リチャード卿が政府に5億ポンドを要求し却下されたことを考えると、救済契約で得られる追加の資金が十分とは到底思えない」と述べた。
4月、ヴァージン・グループ所有のヴァージン・オーストラリアは、コロナショックの影響で経営破綻。結果、リチャード卿の保有する株式、約10%が消滅した。
その後、ベインキャピタルに買収されることが決まり、現在の経営陣および事業のターンアラウンド計画が始まっている。
7月、ヴァージン・アトランティック航空は、パンデミック中にキャンセルされたフライトの払い戻し処理の遅延が表面化し、執行措置を受けた。
フライトを予約した人は、パンデミックという不測の事態を受けキャンセルせざるを得なかった。つまり、払い戻し措置は当然の権利であり、英国民間航空局(CAA)はいかなる理由があろうとこれを脅かしてはならないと警告したのである。
ヴァージン・アトランティック航空は予約者に最大120間払い戻しを待つよう要請した。これに対しCAAは「納得できない」と述べ、国内の18事業者に払い戻し待機時間の見直しを指示した。
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客室乗務員は焦らない・・・