◎グアヤキルの暴力は周辺地域に拡大し、9日に殺害された市民は確認できているだけで10人に達し、警察官少なくとも7人が誘拐された。
エクアドルのノボア(Daniel Noboa)大統領は10日、正体不明のギャングが港湾都市グアヤキルのテレビ局を襲撃するなど、全土で暴力が拡大していることを受け、「戦争状態に突入した」と宣言した。
武装した男たちは9日、生放送中の公共放送スタジオに乱入し、銃を乱射。爆弾をちらつかせて局員を脅した。
覆面をした男たちは「俺たちをなめるなよ」「ノボアを倒す時がきた」「エクアドル国民に力を」などと叫び、機動隊とのにらみ合いの末、逮捕された。
グアヤキルでは8日、世界最大の麻薬組織「シナロアカルテル(Sinaloa Cartel)」と同盟関係にある麻薬ギャング「ロス・チョネロス」のリーダー「マシアス(Adolfo Macías)受刑者」が刑務所から脱獄。ノボア氏はこの異常事態を受け、国家非常事態を宣言し、陸軍と警察に容疑者を確保するよう命じた。
当局はマシアス受刑者の脱獄を支援したとされる刑務官を少なくとも2人拘束したとしている。
武装集団がテレビ局を襲撃した直後、ノボア氏は国内で活動する20の麻薬組織をテロ組織に指定。陸軍に国際人道法の範囲内でこれらの組織を「無力化」する権限を与える政令を公布した。
武装集団はカメラの前で「かかってこい、ノボア」「取り締まりを中止しないと人質を殺す」などと主張していた。
ノボア氏はこの騒乱を「武力紛争」と呼び、「逮捕された13人はギャングではなくテロリストだ」と断じた。
またノボア氏は「ギャングとの全面戦争に勝利するために、全土に陸軍と警察の部隊を展開した」と強調した。
昨年秋の大統領選で勝利したノボア氏は治安と経済問題を最優先すると有権者に約束している。
脱獄したマシアス受刑者の行方は分かっていない。地元メディアによると、国家警察は3000人体制でマシアス受刑者を追跡している。
一方、グアヤキルでは9日、少なくとも29の建物がギャングの襲撃を受け、民間人少なくとも8人が死亡、3人が負傷した。
報道によると、グアヤキルの暴力は周辺地域に拡大し、9日に殺害された市民は確認できているだけで10人に達し、警察官少なくとも7人が誘拐されたという。
グアヤキル中心部の大学ではギャングを支持する集団が大挙して押し入り、校舎を占拠した。負傷者が出たという情報はなく、人質もいないようだ。
隣国ペルーもエクアドル国境沿いの地域に非常事態宣言を出した。大統領府の報道官はX(旧ツイッター)声明を投稿。「陸軍、国家警察、情報機関を国境沿いに展開している」と書き込んだ。