黒人男性の背中に2発の銃弾を撃ち込んだ警察官が殺人と暴行容疑で起訴される
12日、アトランタのレストラン駐車場で、警察官の取り調べから逃亡したレイシャード・ブルックス氏が背中に2発の銃弾を撃ち込まれ死亡した。
この事件を受け、アトランタ警察署長が辞任、銃弾を撃ち込んだ警察官ギャレット・ロルフェ氏が即日解雇された。当局によると、ブルックス氏は取り調べの最中に警察官を襲い、テイザー銃を強奪、逃亡したという。
アトランタ市長と議員は、この事件を「警察官により過剰な武力の行使」と非難、銃の使用は到底容認できないと述べた。
解雇されたロルフェ氏は殺人と暴行容疑などで起訴される予定。有罪となった場合、死刑判決を受ける可能性もある。
【事件発生までのタイムライン】
・22時33分:サウスアトランタにあるウェンディのドライブスルーレストランから警察に通報が入る。
・22時41分:アトランタ警察、デヴィン・ブロスナン氏が現場に到着。ドライブスルーの真ん中に止められた車に近づき、車内に声をかけた。当局によると、ブルックス氏は運転中に眠ってしまい、ドライブスルーを封鎖してしまったという。
・22時56分:ロルフェ氏が現場に到着。この時ブルックス氏は、飲酒したことを認めている。ブロスナン氏が運転免許を確認、尋問を開始。飲酒運転の疑いをかけられたブルックス氏は、友人が運転していたと証言。
・23時00分:アルコール検査を開始。同時に武装の有無も確認し、ブルックス氏は非武装と答えた。検査は順調に進んでいた。この時ブルックス氏は、娘の誕生日で酒を飲み運転したと供述、飲酒運転の事実が確認された。
・23時22分:事件発生。ロルフェ氏が背後から手錠をかけようとしたところ、ブルックス氏が抵抗を開始。警察官二名は強烈な一撃を受け吹き飛ばされたが、すぐさま反撃。しかしその際、取り出したテーザー銃を奪われてしまう。
・23時23分:テーザー銃を奪い逃走したブルックス氏をロルフェ氏が追いかける。この直後、ブルックス氏がテイザー銃を警官のいる方向に向け発砲、逃走しようとしたが、背中に2発の銃弾を撃ち込まれ、倒れた。
現場で対応に当たったブロスナン氏は、事件の証人として裁判に出廷、証言する予定である。この事件はジョージ・フロイド氏の死に対する抗議活動が世界中で行われている最中に発生した。
当局によると、死亡したブルックス氏は娘の誕生日を祝い、翌日スケートに連れて行く予定だったという。同氏の弁護士を務めるクリス・スチュワート氏は、「彼女は父親が迎えにくると確信し、待っていた。三人の娘と長男は、最愛の父を失った」と述べた。
平和的な抗議者たちは意気消沈
ブルックス氏が射殺されたウェンディのレストランは、約1,000人の抗議者たちに埋め尽くされ、放火、炎上し、燃え尽きた。同レストランに罪はなく、この一件を受け、ジョージ・フロイド氏の死に対し平和的な抗議活動を行ってきた者たちは、意気消沈した。
抗議活動に参加していた者は、「なぜ、ブルックス氏は警察官を殴り、テイザー銃を奪わねばならなかったのか。飲酒運転は犯罪であり、逮捕は当然のことである。容疑を認め警察車両に乗り込めば、こんなことにはならなかった」と述べた。
同じく抗議活動に参加していた女性は、「背中に銃弾を2発も打ち込む必要はない。ブルックス氏の飲酒運転と暴行は事実だが、非武装の男性に発砲すれば、死を招くことぐらい誰でも想像できる。威嚇射撃後に取り押さえていれば、彼は死なずに済んだ」とコメントした。
殺人および暴行容疑によって起訴されるロルフェ氏の弁護士は、「ブルックス氏は突然暴力的になり、警察官二名に襲い掛かった。そしてテイザー銃を奪い逃走した。この事実はビデオに録画されている。また、奪ったテイザー銃をロルフェ氏に向け発砲した。これは相手を死に至らしめる可能性のある純然たる犯罪行為だ」と声明を発表した。
弁護士のドン・サミュエル氏は起訴を承認した地方検事に異議を唱えた。「地方検事の起訴決定は非倫理的である。司法は世界中に拡散したフロイド氏の事件を考慮している。フルトン群の検察官たちは、8月の検察審査会選挙を意識しているのだろう」と述べた。
飲酒運転は犯罪である。ブルックス氏は当初友人が運転していたと供述するも、その後罪を認めている。逮捕されるのは当然であり、素直に罪を認めてしまえばよかったのだ。しかし、なぜか暴力行為に走り、テイザー銃を奪って逃走した。
ブルックス氏が逮捕もやむなしの状況を招いたことは事実。ただし、ロルフェ氏による致命的な銃撃も失敗だった。この時、威嚇射撃や足元を狙っていれば、結果は全く違っていたかもしれない。
ロルフェ氏が意図して背中を狙ったか否かは裁判でハッキリするものと思われる。しかし、仮に偶然当たったとしても、人がひとり亡くなった以上、何かしらの罪には問われるだろう。
事件に怒った暴力的な抗議者たちが何の罪もないレストランを襲撃、破壊、放火したことで、平和的抗議者たちはキンキンの冷や水をぶっかけられた。なぜ、レストランは燃やされたのか、誰もが理解に苦しみ、頭を抱えた。
暴力的な抗議者たちは、ブルックス氏の犯罪行為(飲酒運転、警察への暴行)を黙認した。それだけでなく、何の罪もないレストランを燃やし尽くしたのである。平和的な抗議者たちの多くが、「射殺はやり過ぎだが、飲酒運転と暴行は間違いなく罪である」「黒人たちは仲間の犯罪行為を黙認、棚に上げ、暴力を正当化する」と考えた。
結果、フロイド氏の死に伴う抗議運動は勢いを失ってしまった。まずは、自分の犯した罪を認めねばならない。その過程で警察官による不当な暴力を受ければ、抗議して当然である。しかし、罪を犯した仲間の死に怒り、破壊を繰り返す抗議者を支持する者は非常に少ない。
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BBC News - Rayshard Brooks shooting: US policeman faces murder charge https://t.co/11uJQxvD90
— Roy Tindle (@RoyTindle) June 17, 2020