◎シリア内戦の犠牲者は40万人近くに達し、国土の大部分は廃墟と化し、人口2300万人の半数以上が避難民になった。
レバノンのメディアは5日、東部の難民キャンプに避難していたシリア難民数百人が帰国したと報じた。
国営通信NNAによると、ベカー高原にある難民キャンプから少なくとも330人がシリア西部に向かって出発したという。
レバノンと国境を接するシリア西部は内戦の主戦場になった場所のひとつである。
先月26日には約500人がシリアに帰国したと伝えられている。
レバノンは近代史上最悪と呼ばれる経済危機に直面しており、この3年で人口の75%が貧困層に、数十万人がホームレスになったと推定されている。
そこで長年生活してきた一部のシリア難民はレバノンの経済状況が劇的に悪化したことを受け、帰国を決断した。
レバノンは100万人以上のシリア難民に避難所を与えているが、専門家によると、その数は100万をはるかに上回るという。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は約82万5000人のシリア難民を登録しているが、レバノン当局の要請により、2015年にカウントを停止した。
レバノン当局は今年初め、毎月1万5千人の難民を帰国させると表明したが、今のところ実現には至っていない。
レバノン当局は2018年から「自主帰国」の手続きを進めている。帰国したいシリア人は当局に申請書を提出し、当局はその人物がシリアで指名手配されていたり、アサド政権に狙われていないかをチェックする。帰国は危険と判断された場合、難民キャンプにとどまるよう勧告するのだ。
国連はシリアへの帰国を推奨していない。なお、帰国した人はキャンプ生活を続ける人々のごく一部に過ぎない。
政府高官は5日、シリア国境付近を視察した際、記者団に対し、「帰国希望者はレバノンおよびシリア当局から身の安全を保証されている」と説明した。
レバノン当局はコロナウイルスの感染拡大を受け、2020年に帰国手続きを停止していた。当局によると、その時点で約2万1000人が帰国したという。
UNHCRはレポートで、2016年以降の帰国者を7万6500人と推定している。
シリア内戦の犠牲者は40万人近くに達し、国土の大部分は廃墟と化し、人口2300万人の半数以上が避難民になった。