◎メローニ氏はイタリア初の女性首相になる可能性が高くなった。
イタリアで25日、総選挙が実施され、極右政党「イタリアの同胞」のメローニ(Giorgia Meloni)党首が高らかに勝利を宣言した。
メローニ氏はイタリア初の女性首相になる可能性が高くなった。
イタリアの同胞は2012年に創設され、独裁者ムッソリーニ(Benito Mussolini)のファシズムから生まれたイタリア社会運動(MSI)をルーツとする。
ハンガリーを除くEUの同盟国は圏内第3位の経済大国であるイタリアで極右政権が誕生することに懸念を表明していた。
出口調査によると、イタリアの同胞は左派筆頭の「イタリア民主党」を抑えて投票率22~26%を獲得する見通し。
イタリアの同胞、サルビーニ(Matteo Salvini)書記長率いる極右「同盟」、ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)元首相率いる中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」の右派連合は上下両院で過半数を獲得する勢い。上院の投票率は42.2%と予測されている。
しかし、次期首相を決める(承認する)のはメローニ氏ではなくマッタレッラ(Sergio Mattarella)大統領である。
右派連合は強力な任命権限を持つ大統領を議会投票ではなく直接選挙で決めたいと考えており、そのためには憲法改正が必要となる。
メローニ氏はウクライナへの支援を継続すると強調し、EU批判を抑え、ファシストというイメージを払拭することに成功した。
メローニ氏は今年初め、スペインの極右政党ボックス(VOX)の集会に参加した際、騒々しい演説でイタリアの同胞の公約を概説した。「自然な家族にイエス、LGBT推進活動にノー、性的アイデンティティにイエス、ジェンダーイデオロギーにノー、イスラム教徒の暴力にノー、安全な国境にイエス、移民にノー、大きな国際金融にノー、ブリュッセルの官僚にノー!!!」
イタリア民主党のレッタ(Enrico Letta)元首相は声明で、「悲しい夜になった」と述べ、「右派は議会では多数派だが、国内ではそうではない」と主張した。
左派はドラギ政権の崩壊を抑えることに失敗し、他の政党と協力関係を結べず、右派の勢いに圧倒されたようにみえる。
コンテ(Giuseppe Conte)元首相率いる左派「五つ星運動(M5S)」は投票率で3位につけているが、レッタ氏と対立しており、同盟は望めそうにない。
内務省によると、投票率は前回選挙から約10%低下し、63.82%となった。特にシチリア島などの南部地域の投票率が低かったようだ。
イタリアはEU創設国のひとつであり、NATOの加盟国でもあるが、メローニ氏の反EU政策はハンガリーの極右指導者オルバン(Viktor Orban)首相を彷彿とさせる。
メローニ氏と同盟を結んだ指導者はいずれもロシアと密な関係を持っている。ベルルスコーニ氏は先週、「プーチン(Vladimir Putin)大統領はウクライナ侵攻を決断せざるを得なかった」と主張し、西側の対ロシア制裁に疑問を呈したものの、非難の嵐に直面し、謝罪した。
EUはイタリアに2000億ユーロのコロナ復興融資を提供すると約束したものの、融資を受けるにはドラギ政権が準備した改革の履行が必要であり、メローニ氏は「エネルギー危機が状況を変えた」と主張し、これを見直したいと考えている。
ハンガリーの右翼国会議員オルバン(Balazs Orban)氏は早くもイタリアの同胞に祝電を送った「我々は欧州の課題に対して共通のビジョンとアプローチを持つ友人をこれまで以上に必要としています。おめでとう!」
フランスの極右政党「国民連合」のバルデラ(Jordan Bardella)議員もメローニ氏の勝利を祝い、「イタリアの有権者は欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長に謙虚さが重要であると教えた」と語った。
フォンデアライエン氏は以前、イタリアが「難しい方向」に進んだ場合、欧州委員会はそれに対処するツールを持っていると述べていた。
一部の専門家は「右派連合は長続きしない可能性がある」と指摘している。
メローニ氏は西側の対ロシア制裁を支持する一方、サルビーニ氏とベルルスコーニ氏は反対姿勢を示している。ベルルスコーニ氏は盟友であるプーチン氏を擁護する発言で謝罪に追い込まれたものの、対ロシア制裁をめぐる不一致から、右派連合は空中分解するという見方もある。
移民政策も物議を醸すと予想されている。サルビーニ氏は北アフリカ(主にリビアとチュニジア)から渡ってくる移民船を食い止めると約束している。
出口調査によると、右派連合は代議院(下院)400議席中227~257議席。元老院(上院)200議席中111~131議席を獲得する見込み。
中道左派は下院78~98議席、上院は33~53議席にとどまる見通し。