◎ウクライナとロシアはザポリージャ原発を攻撃したと非難し合っており、電源の喪失などによるメルトダウンのリスクが急速に高まっている。
米英仏独の首脳は21日、脅威にさらされているウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所について協議し、原子力施設の安全性を確保する重要性を確認した。
イギリス政府によると、ジョンソン(Boris Johnson)首相、バイデン(Joe Biden)米大統領、マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領、ショルツ(Olaf Scholz)独首相は電話会談でこの問題について協議し、ウクライナへの支援を継続すると改めて表明した。
ウクライナとロシアはザポリージャ原発を攻撃したと非難し合っており、電源の喪失などによるメルトダウンのリスクが急速に高まっている。
同原発は欧州最大規模で、専門家によると、最悪の事態に発展すればチェルノブイリや福島とは比べ物にならない規模の核災害を引き起こす可能性があるという。
ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は21日、定例のビデオ演説で、ロシア軍が8月24日の独立記念日を前に攻撃を激化させる恐れがあると警告した。
ゼレンスキー氏はロシア軍の作戦に言及し、「独立記念日に大恥をかかせ、ウクライナ軍の士気を低下させようとするだろう」と述べ、心を乱されないことが重要だと国民に呼びかけた。「敵は私たちに恥をかかせ、士気を低下させようとするでしょう。挑発に乗らず、これまで同様、強く、的確に作戦を継続することが重要です...」
今年の独立記念日はロシアの侵攻開始から半年の節目でもある。
一方、米英仏独の首脳は電話会談終了後、それぞれ声明を発表し、親ロシア勢力の支配下に置かれたザポリージャ原発周辺で軍事活動を行わないよう自制を促した。
また、ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領が19日に原発へのIAEA査察を認めたことを歓迎した。
4首脳はウクライナの防衛に必要な支援を提供し続けることで合意した。
ウクライナ軍は21日、ザポリージャ原発近くの町がミサイル攻撃を受けたと報告した。死傷者の有無は明らかにされていない。
米シンクタンク「戦争研究所」などによると、ロシア軍は東部ドネツク州の完全制圧を目指しているものの、この数週間ほとんど前進できず、ウクライナ軍に押し返されているように見えるという。
ロシア軍はウクライナ領外でも問題に直面している。
ウクライナ南部クリミアの親ロシア政府は20日、ロシアの黒海艦隊を標的とするドローンを撃墜したと報告した。同政府はウクライナ軍のドローンと報告したが、事実か否かは不明。
クリミア半島では先週から爆発が相次いでおり、空軍基地の爆発ではロシア空軍の戦闘機少なくとも9機が破壊された。
ゼレンスキー氏はウクライナ軍が前線以外の地域へも攻撃を仕掛けていると示唆しているが、クリミアへの攻撃に関与したとは認めていない。
一方、ロシアの首都モスクワで20日、思想家アレクサンドル・ドゥーギン(Alexander Dugin)氏の娘ダリア(Darya Dugina)氏が爆死した。
ロシア国営メディアによると、ダリア氏が運転していた車に爆発物が仕掛けられていた可能性があるという。警察はドゥーギン氏を狙った可能性を視野に捜査を進めているとみられる。
ドゥーギン氏はプーチン大統領の政策に大きな影響を与えたとされる超国家主義者で、「プーチンのブレイン」と呼ばれている。