◎スリランカは対外債務の処理に苦労している。
スリランカのラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は11日、デモ隊の辞任要求をあらためて拒否し、秩序を回復すると約束した。
ラジャパクサ大統領は非常事態宣言に基づき、全国に兵士を配備し、略奪者を厳しく取り締まるよう命じている。
ラジャパクサ兄弟の辞任を求める抗議デモは激しさを増し、一部のデモ隊はラジャパクサ大統領らが所有する豪華リゾート施設を焼き払った。
公金で建設されたと噂されているラジャパクサ博物館も破壊され、そこに展示されていたラジャパクサ兄弟の両親の蝋人形も灰になった。
ラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)首相は9日に辞意を表明したが、大統領は権力の座にとどまると誓い、議会に大統領権限の一部を移譲したうえで新首相を指名すると発表した。
スリランカは1948年の独立以来最悪の経済危機に直面し、500億ドルにのぼる対外債務のうち70億ドル近くを今年中に返済しなければならない。しかし、外貨準備は底をつきかけている。
政府は輸入品の代金を支払うことができず、食料、燃料、医薬品、その他のありとあらゆる日用品が不足している。国民は食料品店に列を作り、調理用のガスを探し求めている。
コロンボの抗議に参加した女性は英BBCニュースのインタビューの中で、「私たちは苦しんでいます。ここには灯油もガソリンもディーゼルも電力も何もありません」と語った。
デモ隊は政府の夜間外出禁止令を無視して抗議を続けている。
コロンボのラジャパクサ博物館を含む政府高官の物件数十戸は放火され、全焼した。負傷者の有無は明らかにされていない。
一方、辞任したラジャパクサ首相とその家族は身の安全を守るために北東部の海軍基地に逃げ込んだと伝えられている。
9日に発生したデモ隊とラジャパクサ派の乱闘では少なくとも9人が死亡、200人以上が負傷した。ラジャパクサ派はこん棒やバールで武装し、大統領府近くのデモ隊を急襲した。
一部の野党政治家は、「暴動は軍事クーデターやラジャパクサ大統領の独裁体制につながる可能性がある」と懸念を表明している。
コロンボの市内には装甲車が配備され、武装兵が睨みを利かせている。
しかし、軍当局はクーデターの噂を強く否定した。
国防長官は11日の記者会見で、「国内で危険な状況が発生した場合、軍はそれに対処する権限を与えられている」と述べた。「私たちは権力を奪おうなどと考えていません。軍は政府の方針に基づき、治安維持活動に取り組んでいるだけです」
スリランカの物資不足は極めて深刻で、政府の不作為が招いた危機は国民に転嫁されている。スリランカ・ルピーは暴落し、インフレは加速し、物資は不足し、停電が常態化している。
コロンボの北部地域では暴徒化したグループが略奪を行い、複数の店舗に火を放ったと伝えられている。
政府は夜間外出禁止令の期間を11日朝まで延長しているが、混乱が収まらなければ再延長もあり得る。
ラジャパクサ博物館の放火事件を目撃したという男性はAP通信の取材に対し、「大統領の演説は遅すぎた」と語った。「あの男は何をしていたのですか?国は完全に行き詰まっています」
デモ隊は軍の取り締まり強化に恐れることなく活動を継続している。
大統領府近くに野営していた団体はSNSに、大統領が去るまで戦い続けると投稿している。
スリランカを20年近く率いてきたラジャパクサ兄弟は「無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」、そして中国の「債務トラップ」に見事に引っ掛かり、主要な港湾インフラを中国に引き渡し、国を借金漬けにした。