◎スリランカは対外債務の処理に苦労している。
スリランカのラージャパクサ大統領は2日、経済危機と政府の怠慢を非難する抗議デモが全国に拡大することを恐れ、非常事態宣言に加えて夜間外出禁止令を発令した。期間は2日夜から4日の朝まで。
大統領府の報道官は記者団に、「夜間外出禁止令はラージャパクサ大統領に与えられた権限に基づき実施される」と説明した。
当局は31日の午後に大統領邸近くで発生した抗議デモと暴動を何とか抑え込み、数十人を逮捕した。
首都コロンボで2日に行われたデモに参加した人権活動家のフェルナンド氏はAP通信の取材に対し、「政府は国民を脅迫している」と語った。「なぜ夜間外出禁止令なのですか?今必要なのは外出禁止令ではなく、食料、ガス、燃料、そして表現の自由です」
ラージャパクサ大統領は1日の深夜に非常事態を宣言し政府の権限を強化したが、食糧や燃料不足、長時間の停電に対する国民の怒りを抑えることはできず、全国で抗議デモを行うという声が高まっている。
スリランカ政府は外貨を獲得できないプロジェクトに数十億ドルを費やし、巨額の債務に苦しむことになった。同国は今年、対外債務を70億ドル近く処理する予定だが、外貨準備は3月中頃時点で4億ドルを下回ったと報告されている。
市民はランプ用の灯油やガソリンを購入するために毎日長い列を作り、電力会社は火力発電の燃料を確保できず、頼みの水力発電も雨不足の影響でまともに機能せず、停電が常態化している。
スリランカの経済危機は歴代政権が輸出を多様化せず、紅茶、衣料、観光といった伝統的な収入源に頼ってきたことが主な原因と考えられている。
またコロナの感染拡大も国の経済に大きな打撃を与え、政府はこの2年間で140億ドル(1.7兆円)の損失を出したと報告している。
この危機はあらゆる階層の人々に影響を与えている。地元メディアによると、普段は街頭抗議に参加しないような中産階級のビジネスマンがキャンドルやプラカードを持って夜な夜な全国各地で集会を開いているという。
怒りに火がついた数百人の群衆は31日、ラージャパクサ大統領の豪華な私邸に通じる道でデモを行い、軍のバス2台に石を投げつけ、1台に火を放ち、消防車を追い返した。
ラージャパクサ大統領は抗議者を「組織化された過激派」と呼び、暴力行為を非難した。警察は催涙ガスと放水砲でこれに対抗し、少なくとも54人を逮捕、数十人が負傷した。AP通信によると、警察官に殴られたジャーナリストもいたという。
緊急事態宣言は公共秩序を維持し、反乱、暴動、内乱を鎮圧するための幅広い権限を政府に与えている。また大統領は法に基づき、市民を拘留し、財産を差し押さえ、裁判所の許可を得ずに家宅捜索を命じることもできる。さらに、憲法を除くあらゆる法律を変更または停止することができる。
国内最大の弁護士団体であるスリランカ弁護士会は2日、「緊急事態宣言は国が抱える問題の解決策にならない」と声明を発表した。
ラージャパクサ家は国内で最も有力な一族のひとつで、大統領の兄のマヒンダ氏は首相、バジル氏は財務相、チャマル氏は灌漑(かんがい)相、甥のナマル氏はスポーツ相など、家族5人が閣僚を務めている。
ラージャパクサ大統領は約25年間続いたタミルの反政府勢力との内戦を終結させたことで知られ、2019年に大統領に就任した。