◎政府は25日から26日の間に殺人事件が70件以上発生したことを受け、非常事態を宣言した。
2022年3月27日/エルサルバドル、首都サンサルバドルの市街地、逮捕された武装勢力の構成員(Salvador Melendez/AP通信)

エルサルバドル政府は28日、週末に殺人事件が多発したことを受け、1,000人以上のギャングを逮捕したと発表した。

ブケレ大統領はビデオ演説の中で、刑務所に収容されているギャングの食事を1日2食に減らすよう命じた。またブケレ大統領は、受刑者のマットレスを押収し、受刑者が廊下や階段をカエルのように行進している動画も投稿した。

政府は25日から26日の間に殺人事件が70件以上発生したことを受け、非常事態を宣言し、刑務所の体制を強化した。

当局によると、軍と警察の合同部隊は殺人事件に関与したとされるギャングの拠点を急襲したという。

ブケレ大統領はツイッターの中で、拘束されたギャングは解放されないと述べている。「解放されると思うなよ。今(逮捕前の受刑者に)与えている食料と同じ量を配給します。国際社会は彼らが心配なら、ここに来てテロリストに食事を与えなさい。私はテロリストを養うために国民の税金を使うつもりはありません」

またブケレ大統領は、看守に追い立てられ走ったり這いつくばったりする看守の動画を投稿した。ある場面では手錠をかけられたギャングと思われる受刑者が、看守に走って階段を降りるよう強制され、転げ落ちるところが映っていた。

受刑者は下着も剥ぎ取られていた。

エルサルバドル議会はギャング関連の殺人事件が相次いだことを受け、27日未明にブケレ大統領の非常事態宣言要請を承認した。

宣言により、集会は制限され、令状なしの逮捕や通信の監視が可能になった。逮捕規則の緩和期間は30日間だが、延長される可能性もある。また、容疑者を弁護士なしで最大15日間拘束することができ、警察による携帯電話やメール調査も認めている。

警察は27日にマラ・サルバトルチャ(MS-13)のリーダー5人を逮捕したと発表した。MS-13は中米と米国で活動するギャングで、エルサルバドル内戦から逃れた難民などが1970~1980年代に結成したと考えられている。生業は殺人、恐喝、麻薬密売。構成員数は3万人以上と推定されている。

ブケレ大統領は先日、国内の刑務所の責任者に収監されたギャングを24時間365日監禁するよう命じた。

ブケレ大統領はツイッターに、「彼らは中庭にさえ出てはならない」と投稿している。「ギャングへのメッセージだ。君たちのせいで君たちの仲間は一筋の光さえ見ることはできないだろう...」

エルサルバドル人はブケレ大統領のギャングに対する圧力や暴力を支持しているように見える。

首都サンサルバドルの住民はAP通信の取材に対し、「ギャングを厳しく罰するべきです」と述べた。「ギャングは好きな時に殺し、好きなように行動します。彼らを擁護する人はほとんどいないでしょう...」

別の女性は、「彼らは刑務所で食事を取り、ギャングの仲間からタバコや酒を入手し、出所したらまた人を殺し、国民の財産を奪います」と述べた。

しかし、過剰な取り締まりは新たな暴力につながる可能性がある。

保守派の民族主義共和同盟は声明で、「今起きていることは、政治家や活動家が犯罪者を保護した結果であることを忘れてはならない」と述べた。

これはブケレ政権がギャングのリーダーたちと密かに停戦交渉を行っていたとする、米財務省の12月の報告書に言及したものであった。

米財務省はブケレ政権がギャングの支持を得るために、投獄された囚人に金銭、売春婦、携帯電話などを与えたと報告している。ブケレ大統領はこの告発を強く否定している。

この告発はブケレ政権の最も大きな成果の一つである、同国の殺人事件発生率が急落した核心を突いている。

エルサルバドルと米国の関係は、ブケレ大統領の法律を軽視する姿勢の影響で悪化した。

米国は昨年5月、新議会が司法長官と最高裁判所憲法審の裁判官を解任したことに深刻な懸念を表明した。

その後、米国際開発庁はエルサルバドルの政府機関に対する援助をNGOにシフトしている。

エルサルバドルの新司法長官は昨年6月、米州機構(OAS)が中米に派遣している汚職防止ミッションへの参加を停止すると発表した。

ブケレ大統領の支持率は非常に高い。同氏はエルサルバドル内戦以降の右派政党が残した政治空白を埋め、急進的な国をつくると宣言している。

2022年3月27日/エルサルバドル、首都サンサルバドルの市街地(Salvador Melendez/AP通信)
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