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米国が対キューバ制裁強化、安全保障上の脅威を理由に

今回の制裁は共産党の治安機構を支援する個人や企業、さらには汚職や重大な人権侵害に関与したとされる関係者を対象とするものである。
中米キューバ、首都ハバナの海岸(ロイター通信)

トランプ(Donald Trump)大統領は5月1日、キューバ政府およびその関係者に対する制裁を大幅に拡大する大統領令に署名した。新たな措置は、同国への圧力を一段と強化する狙いがあり、中南米政策の中核と位置付けられている。

今回の制裁は共産党の治安機構を支援する個人や企業、さらには汚職や重大な人権侵害に関与したとされる関係者を対象とするものである。加えて、エネルギー、防衛、鉱業、金融といった主要産業に関わる国内外の主体にも影響が及び、制裁対象との取引を行った第三国の企業や金融機関にも二次的な制裁が科される可能性がある。これにより、キューバ経済は一層国際金融網から切り離される恐れがある。

トランプ政権はキューバが敵対的な情報活動やテロ関連行為を支援していると非難し、安全保障上の脅威を理由に制裁強化を正当化してきた。また、ベネズエラのマドゥロ政権崩壊後の地域情勢を踏まえ、キューバへの圧力を強めることで、同国の政治体制の変化を促す狙いがある。

一方、キューバ政府はこれに強く反発している。ロドリゲス(Bruno Rodríguez Parrilla)外相は2日、今回の措置を「一方的で強制的な制裁」と批判し、国際法や国連憲章に反すると主張した。政府はこれらの措置を「国民全体への集団的懲罰」と位置付け、主権侵害であるとして非難を強めている。

経済面への影響も深刻である。すでに米国による燃料供給制限などの影響で燃料不足や停電が常態化し、今回の追加制裁はこうした状況をさらに悪化させる可能性が高い。観光収入の減少や物資不足も続いており、市民生活への打撃が懸念されている。

専門家の間では、今回の措置が特に外国企業に大きな影響を及ぼすとの見方が広がっている。二次制裁の導入により、キューバと取引する企業は米市場から排除されるリスクを負うため、ビジネス関係がさらに萎縮する可能性がある。

トランプ政権は対キューバ強硬策を推進し、今回の制裁拡大はその延長線上にある。外交的対話の余地は狭まりつつあり、両国関係は一層緊張を高めている。経済制裁による体制変化を狙う米国と、主権維持を掲げるキューバの対立は長期化する見通しである。

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