メキシコ、公共事業での地産鉄鋼の使用義務化へ、トランプ関税に対抗
シェインバウム氏は「政府調達案件においては、メキシコ産の鉄鋼を使用する」と明言し、国内産業の保護と育成を強調した。
とトランプ米大統領(Getty-Images).jpg)
メキシコ政府は4月29日、連邦政府が発注するすべての公共事業において、国内で生産された鉄鋼の使用を義務付ける方針を発表した。シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領が定例記者会見で明らかにしたもので、米国による高関税措置への対抗策と位置付けられる。
今回の措置は米国が2025年にメキシコを含む各国に対して鉄鋼およびアルミニウムに最大50%の関税を課したことを受けたものだ。メキシコ政府はこれらの関税について不当であると繰り返し批判してきたが、撤廃に向けた交渉は難航している。
シェインバウム氏は「政府調達案件においては、メキシコ産の鉄鋼を使用する」と明言し、国内産業の保護と育成を強調した。この方針は従来慎重だった対米依存からの転換を示すものである。メキシコは輸出の約8割を米国に依存しており、経済構造上、対米関係を損なう政策には慎重だった経緯がある。
背景には米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直し交渉が控えていることもある。米通商代表部は最近、鉄鋼や自動車分野に関する関税が協定見直しで撤廃される可能性は低いとの見解を示し、メキシコ側の不満が強まっていた。
メキシコはこれまで、関税回避に向けて数量枠を設ける案などを提示してきた。一定量までは無関税または低関税で輸出を認め、それを超える分に高関税を課す仕組みである。しかし米側はこうした提案に消極的で、現行の高関税が維持される公算が大きい。
こうした状況を受け、メキシコ政府は内需拡大と国産化の推進に軸足を移しつつある。公共事業における国産鉄鋼の使用義務化は、その象徴的な政策といえる。鉄鋼産業は自動車産業と並ぶ主要輸出分野であり、米国市場への依存度が高い一方で、国内需要の拡大は産業基盤の安定化につながると期待される。
一方で、この政策はコスト増や供給不足といった課題を招く可能性もある。国内生産能力には限界があり、需要の急増に対応できるかが焦点となる。また、対米関係への影響も懸念される。メキシコはこれまで自由貿易体制の恩恵を受けて成長してきたが、米国の保護主義的な通商政策に対抗する形で、自国産業保護へと舵を切り始めている。
今回の決定は世界的に広がる貿易摩擦とサプライチェーン再編の流れの中で、メキシコがどのように経済戦略を再構築していくのかを示す重要な一歩といえる。今後のUSMCA見直し交渉や米国の通商政策の動向が、同国の産業政策と対外関係に大きな影響を与える見通しだ。
