◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ハイチ、首都ポルトープランスの住宅地(ロイター通信)

中米ハイチの暫定首相を選出する「暫定評議会」の委員選出が思い通りに進まず、支援国を困惑させている。

AP通信は25日、カリブ共同体(CARICOM)の関係者の話しとして、「選出された委員のひとりが退任を表明した」と報じた。

この事態を受け、米国、カナダ、フランス、カリブ海諸国の高官らが南米ガイアナで会談したと伝えられている。

CARICOMは14カ国と1地域が加盟し、アンリ(Ariel Henry)首相の後を継ぐ暫定評議会の設置に向けた取り組みを主導している。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

首都ポルトープランスでは1年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

一連の戦闘により警察官を含む数十人が死亡、3万3000人以上がポルトープランスから逃れた。

APによると、暫定評議会は9人の委員で構成され、そのうちの1人(地元の女性議員とされる)が退任の意向を示したという。

APは関係者の話しとして、「この委員は殺害予告を受け、退任を決断した」と伝えている。

ハイチのユニセフ大使は25日、X(旧ツイッター)に声明を投稿。「退任を決めた委員は本人だけでなく家族が標的になったと報告している」と書き込んだ。

また同大使は「恐怖で国を支配しようとする勢力に打ち勝たなくてはならない」と強調した。「今こそ暴力を食い止める時です...」

暫定評議会の委員9人のうち、投票権を持つのは7人になる予定。発足次第、暫定首相を任命し、治安の回復と総選挙に向けた準備を進めていくことになる。

アンリ氏は国際空港が閉鎖された影響で未だに帰国できずにいる。

国連安保氏は昨年、ケニア率いるハイチPKOの派遣を全会一致で採択したものの、ケニア高等裁判所は先月末、この決定に基づきハイチにケニアの警察官を派遣することは違憲であると裁定。この裁判は現在、最高裁で争われている。

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