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ドミニカ大統領、カナダ企業による金採掘計画の中止決断「社会的合意得られていない」

問題となっているのは中部サンフアン州で計画されている金鉱開発で、数十億ドル規模の投資が見込まれていた。
ドミニカ共和国の金鉱山(Getty Images)

カリブ海の島国ドミニカ共和国で大規模な金採掘計画をめぐる対立が激化する中、政府が事業の停止に踏み切った。アビナデル(Luis Abinader)大統領は4日、カナダの鉱山企業ゴールドクエスト・マイニング(GoldQuest Mining Corp)が主導する採掘プロジェクトについて、社会的合意が得られていないとして、承認手続きを進めない方針を明らかにした。

問題となっているのは中部サンフアン州で計画されている金鉱開発で、数十億ドル規模の投資が見込まれていた。政府はこれまで、投資による雇用創出や地域経済の活性化を期待し、環境影響評価の審査を進めてきた。しかし、地元住民や農業関係者、環境団体が水資源への影響を強く懸念し、大規模な抗議活動が各地で発生していた。

特に焦点となったのは、水の供給への影響である。サンフアン州は国内有数の農業地帯で、稲作や豆類などの生産を支える灌漑(かんがい)用水が地域経済の基盤となっている。住民側は採掘による地下水の枯渇や水質汚染が起きれば、農業生産が壊滅的な打撃を受けると訴えてきた。こうした懸念は都市部にも広がり、首都圏を含む各地でデモや集会が相次いだ。

アビナデル氏は国民向けの演説で、「環境と水は国家にとって最も重要な資源であり、社会的な合意がないまま進めることはできない」と強調した。その上で、今回の決定は単なる一時停止ではなく、現行条件のもとではプロジェクトを承認しないという明確な政治判断であることを示した。

一方、ゴールドクエスト・マイニングはこれまで、最新の技術を用いて環境への影響を最小限に抑える計画だと説明してきた。同社は規制当局の要件に従い、環境保護措置や水管理計画を提示していたが、地域社会の不信感を払拭するには至らなかった。今回の決定を受け、同社は政府と対話を継続する姿勢を示すとみられるが、計画の先行きは不透明となっている。

今回の事態は資源開発と環境保護のバランスをめぐる対立を浮き彫りにした。ドミニカは観光業と並び、鉱業を経済成長の柱の一つと位置付けてきたが、近年は環境意識の高まりを背景に、開発プロジェクトへの社会的な監視が一段と強まっている。特に水資源を巡る問題は政治的にも敏感で、政府にとっては国民の支持を左右する重要な争点となっている。

中南米では同様の構図が各国で見られる。鉱物資源の需要が世界的に高まる一方で、地域住民の権利や環境保護を重視する動きが強まり、大規模プロジェクトが計画段階で頓挫する例も少なくない。今回の決定も経済合理性だけでは進められない現実を示すものとなった。

政府は今後、持続可能な開発のあり方について改めて検討を進めるとしているが、外資誘致と環境保全の両立という難題に直面する構図は変わらない。今回のプロジェクト停止は一企業の問題にとどまらず、同国の資源政策全体に影響を及ぼす可能性がある。国民の不安と期待が交錯する中、政府がどのような指針を打ち出すのかが注目される。

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