キューバ経済危機、物資不足により役割失った「配給手帳」
配給手帳は1960年代初頭に導入され、国民に安価で基本的な食料を公平に配給する仕組みとして機能してきた。
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カリブ海の社会主義国キューバで、共産党が配給制度として長年運用してきた配給手帳「ラ・リブレタ」が、深刻な物資不足により機能不全に陥りつつある。経済危機の長期化に伴い、国民の多くが最低限の食料さえ確保できない状況に追い込まれている。
配給手帳は1960年代初頭に導入され、国民に安価で基本的な食料を公平に配給する仕組みとして機能してきた。かつては米や砂糖、肉、乳製品など幅広い品目が毎月支給され、家庭の食生活をほぼ支える存在であった。しかし現在では配給量が大幅に減少し、供給される品目もごく限られている。
首都ハバナの国営配給店では、かつて商品で埋め尽くされていた棚がほぼ空になり、約5000人の利用者に提供できる食料はわずかしか残っていない。店員は「配給だけで生活することはもはや不可能だ」と語り、制度の限界を指摘する。
現在、配給で手に入るのは米や砂糖など最低限の主食に限られるケースが多く、肉や乳製品といった栄養価の高い食品はほとんど姿を消した。政府の補助価格で購入できる量も減少し、多くの家庭が不足分を市場で補わざるを得ないものの、物価の高騰によりそれも困難になっている。
背景には、深刻な経済危機がある。キューバは食料の8割を輸入に依存しているが、外貨不足により輸入が滞り、国内供給網も機能不全に陥っている。また、2021年の通貨統合政策の混乱や慢性的な燃料不足、停電などが生産や流通をさらに圧迫している。
こうした状況の中、国民生活は急速に悪化している。給与水準は依然として低く、民間市場で販売される商品は米ドルなど外貨建てで価格が設定されることも多い。そのため海外から送金を受けられる家庭とそうでない家庭の間で生活格差が拡大している。支援を受けられない人々の中には、1日1食でしのぐ者も少なくない。
高齢者や低所得層への影響は特に深刻である。年金だけでは生活が成り立たず、教会や慈善団体に頼るケースも増えている。若年層の間では国外移住を選択する動きも加速し、社会構造にも影響が出ている。
共産党は配給制度の見直しを検討中で、必要な人々に直接補助を行う仕組みへの移行を示唆している。しかし、制度改革には時間がかかる見通しで、当面は供給不足が続く可能性が高い。
冷戦期には国民生活を支える象徴でもあったラ・リブレタは、現在ではその役割を失いつつある。経済の停滞と物資不足が重なる中、キューバの社会保障の柱は揺らいでおり、人々は日々の食料確保に苦闘している。
