◎マラリアワクチン(RTS,S)の有効性は約30%、投与回数は4回。
2009年10月30日/ケニア西部のコンベワの医療機関、マラリアワクチンの臨床試験(Getty Images/AFP通信)

10月6日、世界保健機関(WHO)が世界初のマラリアワクチンを承認した。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は承認を「歴史的な瞬間」と呼び、臨床試験や製造に関わった全ての関係者に謝意を示した。「独立した諮問委員会の承認は、最も重い負担を背負わされているアフリカ大陸に希望の光を届けます。より多くのアフリカの子供たちがマラリアから保護されることを期待しています」

WHOに助言する2つの諮問委員会は6日にワクチンを承認した。

諮問委員会の決定はガーナ、ケニア、マラウイで進行中の試験および調査に基づいており、WHOによると、2019年以降にワクチンを接種した80万人以上の子供を追跡調査したという。

マラリアワクチン(RTS,S)の有効性は約30%、投与回数は4回で、接種から数か月経過すると保護が弱まる。それでも科学者たちは、このワクチンがマラリアに大きな影響を与えると可能性があると指摘した。マラリアの年間感染者数は世界で2億人以上、死亡者数は40万人以上と推定されている。

マラリアは蚊に刺されることで感染する。寄生虫を殺す薬、殺虫剤、蚊に刺されることを防ぐ蚊帳はマラリアの感染者数を抑えることに貢献したが、アフリカ大陸の感染者数はなかなか減少せず、2019年には26万人以上の子供が死亡した。

WHOの専門家によると、被接種者は完全に保護されるわけではないが、コロナウイルスワクチンと同じく、重症化する可能性は低くなるという。

今回承認されたRTS,Sは、アフリカ大陸で最も致命的と考えられている熱帯熱マラリア原虫からの保護に狙いを絞っている。

2015年に公表された試験のデータによると、RTS,Sは感染を40%、重症化を30%予防し、輸血を必要とする重症患者を3分の1に減らしたという。

ただし、免疫を高めるためには4回接種する必要があり、一部の専門家はインフラの整っていない広大なアフリカ大陸でうまく接種を行えるかどうかが最大の課題と指摘した。

WHOによると、ワクチンは生後5か月、6カ月、7カ月でそれぞれ1回ずつ接種し、4回目は生後18か月で接種する必要があるという。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのアズラ・ガニ博士は、アフリカの子供たちにマラリアワクチンを接種すると、全体の感染者数は30%減少し、1年あたりの症例数は最大800万件、死亡者数は40,000人減少すると推定した。「マラリアのない国で生活している人々は保護率30%を低いと思うかもしれません。しかし、30%の削減は多くの命と子供を治療する医療機関を救うでしょう」

ガニ博士はファイザーワクチンの製造に使用されたメッセンジャーRNA(mRNA)技術がマラリアワクチンの効果の向上を後押しするかもしれないと述べた。「mRNAははるかに高い抗体レベルを示しました。mRNAがマラリアワクチンの第二世代の研究に影響を与えるかどうかは分かりませんが、それが新しい選択肢のひとつになることは間違いありません」

<マラリアワクチン(RTS,S)について>
・重症化率を約30%低減させた。

・4回接種。(生後5か月、6カ月、7カ月、18か月)

・他のワクチンや薬に影響を与えない。

・費用対効果は高い。

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