EU長期予算案に加盟国が反発、年内合意に暗雲、農業支援や防衛投資に影響も
加盟国間の対立の背景には、限られた財源をどの政策に振り向けるかという問題がある。
と欧州委員会のフォンデアライエン委員長(AP通信).jpg)
欧州連合(EU)加盟国の首脳らは15日、ブリュッセルの首脳会議で、2028~34年の7年間を対象とする予算案に強い懸念を表明した。アイルランドが議長国として提示した修正案に対し、拠出額の大きい国々と農業・地域支援の維持を求める国々の双方から批判が噴出。年内合意の実現が危ぶまれている。
アイルランドの修正案は欧州委員会が当初提示した予算規模から1410億ユーロ削減し、総額を1兆6200億ユーロ(約287兆円)とする内容だ。それでも現行の2021~27年予算を30%上回る規模となる。EUの長期予算は加盟27カ国の経済規模などに応じた拠出金を主な財源とし、各国の政策や事業に配分される。
スウェーデンのクリステション(Ulf Kristersson)首相は、修正案では自国のEU予算への純拠出額が60%増えると指摘し、「あまりにも大きく、あまりにも高額だ」と批判した。
ドイツのメルツ(Friedrich Merz)首相も、加盟国がこれほどの負担を負う余裕はないとの認識を示し、週末までに合意に達することに疑問を呈した。
一方、スペインやイタリアなどを含む17カ国は「結束の友」と呼ばれるグループを形成し、農業補助金や経済的に豊かでない地域への支援を守るよう要求している。こうした政策はEU予算の約3分の2を占める。欧州委員会も削減案に不満を示し、予算の縮小によってEUが共同で行動する能力が損なわれると警告した。
加盟国間の対立の背景には、限られた財源をどの政策に振り向けるかという問題がある。EUはロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に加え、防衛力の強化、研究開発、産業競争力の向上などへの投資を迫られている。エネルギー価格の高騰や米中との貿易摩擦も、欧州経済に重くのしかかる。拠出金を増やさなければ、農業・地域支援を削るか、新たな優先政策への投資を縮小せざるを得ない。
欧州理事会のコスタ(Antonio Costa)常任議長は年内合意を目指す方針を示し、今後の交渉を主導する。2027年にはフランス、イタリア、ポーランドなどで選挙が予定され、政権交代によって交渉がさらに難航する可能性もある。
年内に合意できなくても直ちに予算が途絶えるわけではないが、2028年1月から新予算を運用するには、加盟国全てと欧州議会の承認を含む法整備が必要である。首脳らは11月下旬と12月の会議でも協議を続ける見通しだ。
